俳優/アーティスト・のんが1日、東京・Zepp Shinjukuでツアー『のん自由(10)ツアー2026』の東京公演を開催。同公演のオフィシャルライブレポートが届いた。
【ライブ写真たくさん】元GO!GO!7188のユウ&アッコとの夢の共演シーンも!『のん自由(10)ツアー2026』東京公演の模様
■オフィシャルライブレポート
11月1日、Zepp Shinjukuで『のん自由(10)ツアー2026』の東京公演が開催された。のんとして活動を開始してから10年、芸能界デビューから20年というダブルアニバーサリーを記念したプロジェクト「のん10≧20(のんテントゥエンティ)」の一環として開催されたこのツアー。初日となった岩手県・久慈公演では同地が舞台の『あまちゃん』で共演した橋本愛と13年ぶりにオンステージするなど、大きな話題を呼んだ。
ツアー2公演目にあたる東京公演、SEが鳴り止むとステージにはアコースティックギターを抱えたのんが現れる。シルバーの衣装を身に纏った力強い立ち姿だ。1曲目は弾き語りによる「夢が傷むから(Inspired by 東京百景)」で、切々と歌を紡いでゆく。ただ1人で「輝く夢を掴むから」と歌うのんにこの20年間の歩みが重なってゆく。節目のツアーのオープニングに相応しいナンバーだった。
1曲目を歌い終わると「私とみんなの過ごしてきたこの10年の中で、1番自由な日にしましょう」と呼びかけ、バンドメンバーが登場。ひぐちけい(Gt)、なかむらしょーこ(Ba)、ナガシマタカト(Dr)という盤石の布陣だ。久慈公演はアコースティック編成でのライブだったが、この日は2曲目からアグレッシブなバンドサウンドが全開。のんも「最後までぶちあがりましょう」と煽りまくる。「秒針」「春よ受けて立つ」「Beautiful Stars」といったアッパーチューンを息もつかせぬ怒涛の勢いで畳みかけていく。ひとつのツアーでありながら、公演ごとにこれほど幅広いアプローチができる、唯一無二の存在だと知らしめる序盤だ。
MCでは夢が尽きないことを語るのん。「今の夢は家を植物で埋め尽くしてジャングルにすること」と独特の生活感にあふれた話をしつつ、「夢にも色々あって、疲れちゃうんだけど、これがあるからやめられない」と前置きして「夢の味」を披露。軽やかなグルーヴとともにしなやかなハングリー精神を歌うこの曲は、自由を掲げるこのツアーにぴったりだ。そして続く「Renarrate」「薄っぺらいな」が今の彼女のスタンスをパワフルに伝える。昨年、アルバム『Renarrate』で怒りや祈りも含めた物語を語り直したのん。凛々しく、ポジティブなモードが伺えるブロックだった。
「この日々よ歌になれ」でスケールたっぷりの高揚感をもたらしたあと、バンドメンバーを残してのんは一時退場。幕間の映像で期待を高めて登場したのはこの日のスペシャルゲスト、チリヌルヲワカのユウと、ノマアキコ(アッコ)。のんが「青春時代のヒーロー」と語るGO!GO!7188の元メンバーである。この2人とのんがステージで共演するのは今回が初めてのこと。そもそもユウとアッコが共演するのもGO!GO!7188解散以来なかったことであり、凄まじく特別な光景だ。
ここからはユウ作曲、アッコ作詞によるのん楽曲を披露するブロックだ。泥臭いサウンドが胸焦がす「やまないガール」、小気味よく涼しげな歌が光る「ナマイキにスカート」といった人気曲を溌溂とプレイ。2番ではユウがメインボーカルを取るなど、スペシャルすぎる時間だ。のんにはエネルギッシュでタフな楽曲が多いが、ユウとアッコが作った楽曲はどこか軽妙洒脱で、のんの持つ柔らかな毒気を表現しているように聴こえる。アッコはMCで「すごく努力をしてると思うんですよ。でも軽やかに見えるのがすごい」とのんを讃えていたが、彼女のそうした側面をアッコとユウが楽曲を通して見事に表現していると言える。相思相愛、理想的なクリエイティブの交差だ。
のんの学生時代の思い出を結晶化した「涙の味、苦い味」を披露した後、のんがGO!GO! 7188のコピーバンドをしていた頃の話も語られた。そしてライブで初めてアンコールを求められた際に演奏した曲として、GO!GO! 7188「雨上がり アスファルト 新しい靴で」をカバー披露。言うなれば、のんが初めて音楽の表現者として求められた時に鳴らされた歌だ。美しい刺繍をあしらったクールな黒い衣装を身に纏ってはいるが、この瞬間はすべてが無防備になり、表現の原風景へと回帰していくような劇的な名シーンに思えた。
GO!GO!7188の代表曲「C7」のカバーで大いに観客を沸かしたあと、ユウとアッコはステージを去る。そして元のバンドメンバーに戻って歌われるのはキリンジ「エイリアンズ」だ。2017年、のんとして初めてリリースされた楽曲。この歌が流れるTVコマーシャルで当時、メディア出演を再始動した経緯もある。のんとしてのキャリアを語る上で欠かせないこの曲が、ここで鳴らされる意義は大きい。
「エイリアンズ」が出発点ならば、続く「荒野に立つ」はその旅路を生々しく捉えた重要曲だ。その重厚さ、込められたメッセージの切迫性、心を激しく揺さぶるナンバーで聴いている内に彼女の歩みと伴走しているような気持ちにもなる。アニバーサリーツアーだからといって、ただの明るい祝祭にするのではなく傷や痛みに抗ってきた歴史を刻みつけるのがのんの在り方だ。彼女の表現の核心部に迫る名演だった。
そして、のんが初めて作った楽曲でデビュー盤にも収められた「へーんなのっ」が先ほどまでの空気を一変させる。シンプルなビートロックナンバーで、のんの音楽性の根幹である。飄々(ひょうひょう)としてユーモラスな楽曲だが、歌詞には苛立ちや闘志も込められている。「嫌なものは嫌だ」「変なものは変だ」と捲し立てる姿は、「Nonと言える人」「Nonを叩きつける人」という意味合いを持って付けられた“のん”という名前と強く呼応する。のんは最初からのんなのだ。その確かな意思がポップに届けられる様が、ただただ眩しい。
「フィルムの光」からはいよいよ終盤へ。「クライミー」ではブルースハープを高らかに響かせたあと、「私と一緒だから怖くない」と前置きしラストナンバー「愚か者の僕と君」で爆発的な昂ぶりへとフロアを引き連れてゆく。建前や前提をぶち壊し、夢を叶え続けるのんだからこそ歌える特大アンセム。「大袈裟な夢も離さないで」と叫ぶその説得力たるや。この言葉を綴るに相応しい存在感をありありと示し、本編は終了となった。
アンコールに応えて「私は部屋充」でさらに大合唱を巻き起こし、クライマックスのその先へ。ユウとアッコを再度ステージに招き入れ、“3テレキャスター/2ベース”という異様な編成で「タイムマシンにおねがい」を轟音サウンドで放った。それぞれのソロ回しも華麗に決まり、アニバーサリーのパーティーとして完璧な、まさしく大団円の時間だった。
自由の名の下に繰り広げられたこのライブ。隅から隅までのんであり、能年玲奈である。濃密な人生の一幕を観たような夜だった。前例のない歴史を辿ってきた彼女だからこそ、生き様と表現が噛み合い、駆動することで、強烈な感動をもたらすのだろう。自分の人生の主導権を誰にも奪わせることなく、全てを集約して見事にショーアップしたこの公演を通してその実感はさらに色濃くなった。これからも自由奔放に、輝きを放ち続けて欲しいと思う。
公演はU-NEXTにて視聴が可能。11月15日午後11時59分まで見逃し配信期間となっており、そのほかのん関連作品と併せて楽しんでみてほしい。
(文・月の人)