俳優の柄本佑、石橋静河と広瀬奈々子監督が11日、韓国で開催中の「第31回釜山国際映画祭」(10月6日~15日)で、映画『このごにおよんで愛など』(11月27日公開)のワールドプレミア上映に参加した。主演の長澤まさみはインフルエンザのため現地参加を見送ったが、柄本が顔パネルを手に登壇。参加がかなわなかった長澤の存在を観客に届けた。
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本作は、是枝裕和監督や西川美和監督の監督助手を務め、『夜明け』(2019年)で長編映画監督デビューした広瀬監督の長編第2作。自ら企画・脚本を手がけ、撮影監督のヤオ・ホンイーら台湾のスタッフを迎えた日台合作で、映画祭のコンペティション部門に出品された。
長澤演じる絵本作家・小島詩は、夫の杜夫(柄本)との結婚生活を続ける一方、担当編集者の倉持潤奈(石橋)とも恋人関係にある。どちらも手放せない詩が「3人で子どもを作る」と提案したことから始まる、3人の暮らしと関係の変化を描く。
会場となった映画の殿堂・ハヌルヨン劇場は満席に。舞台あいさつでは、柄本が長澤のメッセージを代読した。長澤は、撮影中から「釜山映画祭に行けたらいいよねぇ」と話していたことを明かし、参加を見送ることになった残念さを伝えた。一方で、「きっと佑くんとしずかちゃんが舞台あいさつを大いに盛り上げてくれると思いますので、安心しております!」と共演者へ思いを託した。
作品については、自分たちらしい家族の形を求め、3人が悩みながら前へ進む物語だと紹介。自身も、普段の生活では見えづらい人々の存在や視点に触れるきっかけになったとし、「複雑なことを知った気になるのではなく、知ろうとし続ける姿勢を大切に日々を生きたい」と思いを伝えた。最後には「また、いつか、皆様とお会いできますように」と再会を願い、韓国語で「みなさん、大好きです」と呼びかけた。
柄本は今回、海外の映画祭自体が初参加。韓国語で自己紹介した後、「『みなさんよろしくお願いします』と言おうと思ったのですが、この道中で何というか忘れちゃいました(笑)」と話し、会場の笑いを誘った。石橋も韓国語であいさつし、「みなさんがすごく映画を愛しているんだなということを感じられる雰囲気でとても幸せです」と喜びを語った。
3人は観客とともに作品を鑑賞し、上映後のQ&Aにも登壇。柄本は、笑いや思いがけない反応が起きたことに触れ、「ある種の感覚みたいなものが海を渡ったなっていうことを実感しました」とコメントした。石橋も、「この映画のテーマはとても複雑なものだと思うのですが、広瀬監督はその中に軽やかさをたくさん詰め込んでいて、それをしっかり皆さんが受け取ってくださった感覚がして、胸がいっぱいです」と感無量の様子だった。
役作りについて問われた柄本は、物語を特別なものではなく、ごく普通の日常として捉えていたと説明。「僕が真顔でいると、どうしても何かを疑っているように見えてしまうみたいで(笑)」と前置きし、詩と潤奈の関係に気づいていない序盤では、反応をあえて軽やかに、大きめにしていたと明かした。詩からカミングアウトを受けるまでは、「『潤奈ちゃんいい子だな』という素直な気持ち」が伝わるよう、明るい反応を演技のベースにしたという。
石橋には、潤奈と自身が求める「愛の形」について質問が寄せられた。「潤奈は『子どもがほしい』という強い願いを持ち、それは当たり前に叶うものだと思って生きてきた。でも制度によってその『当たり前』から排除され、苦しむことになる」と説明。「それでも詩ちゃんのことが好きであきらめない姿勢にすごくひかれました」と語った。
自身にとって愛することは「ギブすること(与えること)」だという石橋。「潤奈も本当は誰かに惜しみなく愛を与えたかったはずなのに、それができなかったことが何よりの苦しみだったのではないかと思います」と、役への思いを明かした。
広瀬監督は、詩を「『子ども』のような存在として、常に後部座席に座っているようなイメージ」で描いたと説明。「一見、詩ちゃんだけがわがままに見えますが、杜夫にも潤奈にもそれぞれ譲れないものがあります」とし、それぞれの思いをぶつけ、混ぜ合わせながら物語を作ったと語った。
『夜明け』、ドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』(2019年)に続き、3作品連続で釜山国際映画祭に出品された広瀬監督。上映後には「少し笑いも起きていてほっとしました」と振り返り、観客とともに作品を観られた喜びと感謝を伝えた。
■長澤まさみのコメント(全文)
今日は、素晴らしい晴れ舞台に参加することができず、ごめんなさい。映画の撮影時から、「釜山映画祭に行けたらいいよねぇ」なんて、話していた中での念願の映画祭参加だったのでとても残念です。あ、でも、きっと佑くんとしずかちゃんが舞台挨拶を大いに盛り上げてくれると思いますので、安心しております!
『このごにおよんで愛など』は、自分たちらしい「家族」の形を求めて、3人が悩んだり、立ち止まったりしながら必死に前に進んで行く物語です。この作品を通して、普段生活していて見えづらい、さまざまな人たちの存在や、視点に触れるきっかけになったように思います。複雑なことを知った気になるのではなく、知ろうとし続ける姿勢を大切に日々を生きたいです。この映画が、釜山映画祭という大きな舞台で世界初上映されると思うと心が躍ります。
また、いつか、皆様とお会いできますように。(韓国語で)みなさん、大好きです。