“じゃら付け”ブームで予約完売、新シリーズ「ぷちリカちゃん」にみる金看板だからこその柔軟性

 着せ替え人形・リカちゃんの新シリーズが、ヒットの兆しを見せている。今月14日に発売された約7cmの『ぷちリカちゃん』だ。昨年12月下旬に予約受付が始まると、公式ECサイトではわずか数日で予約販売分が完売。SNSでは「全部揃えたい」「可愛い」といった声が相次いだ。1967年の誕生から59年目にして、新シリーズとなる“ぷちサイズ”のリカちゃん。その背景には、バッグにマスコットやチャームを重ね付けする“じゃら付けバッグ”文化の広がりとともに、時代の変化を受け止めながら形を変え続けてきた、リカちゃんブランドの柔軟性と強度があった。

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■何十年も見送られた構想が実現 「ぷちリカちゃん」誕生の裏側

 約7cmという、従来にないサイズ感で登場した『ぷちリカちゃん』。2月14日に発売された第1弾では、世界的な人気を誇るサンリオキャラクターと、“平成女児”の文脈で再注目されるナルミヤキャラクターとコラボ。各6種、計12種類がラインアップされた。

 実は「小さいリカちゃんを作る」というアイデア自体は、何十年も前から社内で議題に上っては消えてきたという。サイズを小さくすれば、造形や可動、髪の表現など、リカちゃんらしさを保つハードルは一気に上がる。では、なぜ今、この挑戦が実現したのか。

 背景にあったのが、世界的に広がるミステリーボックス(中身が事前には分からない状態で販売される箱)の流行と、バッグやリュックに複数のマスコットやキーホルダーを付ける“じゃら付け”文化の定着だ。『ぷちリカちゃん』の開発を担当したタカラトミーの相馬梨良さんは、こう語る。

「ミステリーボックスは、どれが出るかわからないワクワク感があり、着せ替え人形の楽しさと相性がいいんです。さらに小さいサイズにすることで、飾るだけでなく、バッグにつけて持ち歩くなど、遊び方の幅も広がります。今のトレンドと重なったことで、ようやく商品化が実現しました」(相馬さん)

 国民的玩具や定番商品には、「昔から変わらないもの」というイメージがある。しかし、リカちゃんはそうした枠に収まらない存在だ。1967年の誕生以来、“同じであり続ける”のではなく、時代の空気を取り込みながら変化を重ねてきた。その積み重ねが、結果として国民的な支持につながっている。普段着から憧れのドレス、さらにはさまざまな職業制服まで、子どもたちの「なりたい」という思いを具体化。流行や価値観を映し出しながら重ねてきた歩みこそが、リカちゃんの歴史といえる。

■まつ毛1本まで調整 何十回の試作が生んだ新フェイス

 一方で、今回の『ぷちリカちゃん』は、サイズも頭身も、従来のリカちゃん像とは大きく異なる。同社マーケティング課では、「受け入れてもらえるかどうか不安もあった」と率直な思いを明かす。

「正直、顔のバランスもこれまでのリカちゃんとは違うので、どう受け取られるか不安でした。ただ、『可愛い』という声をたくさんいただき、リカちゃんブランドの新たな可能性を感じることができました」(タカラトミー・マーケティング担当者)

 相馬さんも、開発の難しさをこう振り返る。

「約7cmの頭身で、リカちゃんの良さはしっかりと残しながら可愛くするためにはどうしたらいいか。まつ毛の長さから目の縦と横の比率、目の距離感、口と鼻の距離感など何十回も試作を重ねて、微調整を重ねながらこの顔にたどり着きました」

 左を向いた瞳という象徴的な表情はもちろん、ミニサイズながら植毛された髪、着脱可能な洋服と靴、靴着用時には自立する設計、手足が動きポーズを変えられる可動域。“縮小”ではなく、“再構築”とも言える作り込みが、『ぷちリカちゃん』には施されている。

■懐かしさと今らしさの共存、Z世代も評価

 発売前に行われたインフルエンサー向けお披露目会では、かつてリカちゃんで遊んでいたというインフルエンサーからも高評価が相次いだ。村上朱音さんは、こう語る。

「小さいのに、ちゃんとリカちゃんの顔だって感じがします。このサイズで植毛なのもすごい。昔遊んでいた人ほど、より可愛く感じると思います」(村上さん)

 “じゃら付け”文化を楽しむ世代からは、ファッションアイテムとしての評価も高い。榮優真さんは、「ぷちリカちゃんは大人のファッションにも合わせやすい。バッグやケータイに複数付けしたいし、全部コンプリートしたいですね」と話す。

 実際、公式ECサイトの予約では「BOX買い」をする人も少なくなかったという。

 シールやキャラクターグッズなど、平成カルチャーの再評価が進む中で、『ぷちリカちゃん』もその文脈で語られることが多い。高橋萌さんは、「懐かしさと今っぽさが同時にある」と話す。

「昔リカちゃんで遊んでいた頃や、平成時代に携帯にジャラジャラ付けていた記憶が重なって、ときめきます。ファッションとして気分が上がるし、写真も撮りたくなりますね」

 同じように、“子どもの頃に好きだったキャラクターとの再会”として、ぷちリカちゃんに惹かれている人もいる。礼華さんは、子ども時代に親しんだアンパンマンやペコちゃんを、現在はバッグに付けたり部屋に飾ったりして楽しんでいるひとりだ。リカちゃんに触れるのは幼稚園時代以来久しぶりだというが、「ぷちリカちゃんはサイズ感も顔も可愛くて、カバンやケータイにつけたくなる」と目を輝かせる。

 こうした声から見えてくるのは、“懐かしさ”だけにとどまらず、今のファッションや遊びの方として成立させている点だ。

■自然発生的に広がった“リカ活” 世代を超えるブランド力

 在宅時間が増えたコロナ禍をきっかけに、リカちゃんの洋服づくりやSNS用の撮影などを楽しむ大人の楽しみ方「リカ活」が自然発生的に広がり、Instagramでは「#リカ活」で約28万件(26年2月現在)もの投稿が見られる。『ぷちリカちゃん』の情報解禁時にも、「リカ活がさらに忙しくなりそう」という声が寄せられたという。

 SNSでの反響を受け、タカラトミーは今後への期待を語る。

「リカちゃんの一番の魅力は、世代を超えて誰もが知っている存在であること。その積み重ねてきた歴史こそが、最大の強みだと思います。ぷちリカちゃんをきっかけに、初めてリカちゃんに触れる方もいれば、久しぶりに戻ってきてくださる方もいる。今後もさまざまなキャラクターとのコラボや、多彩なバリエーションを展開しながら、日本発の着せ替え人形として、世界に魅力を届けていきたいです」(同社マーケティング担当者)

 1967年の誕生以来、リカちゃんはその時代ごとの流行や価値観を取り込みながら姿を変えてきた。長年にわたり支持を維持してきた背景には、「変わらないこと」ではなく、「変わり続けること」を選んできたブランドの姿勢がある。ぷちサイズという新機軸で登場した『ぷちリカちゃん』は、その蓄積された強度と、トレンドを的確に取り込む柔軟性を改めて示す試みといえそうだ。

(取材・文/河上いつ子)