西川美和監督の映画『わたしの知らない子どもたち』(10月16日公開)の特別先行上映会が25日、宮城・仙台の電力ホールで開かれた。主演の小八重葵美(13)、父親役の竹野内豊(55)、音楽を手がけた原摩利彦(43)、西川監督(52)が登壇。東北ユースオーケストラによる一夜限りの生演奏に、小八重が涙を見せる場面があった。
【動画】東北ユースオーケストラ演奏による特別MV
『すばらしき世界』以来、6年ぶりとなる西川監督の新作は、1945年の終戦後を舞台に、戦争孤児となった少女・琴子ら子どもたちの視点から、戦争が終わった後も続く困難を描く。小八重と二階堂ふみがダブル主演を務め、竹野内は琴子の音楽家の父・孝一を演じた。
西川監督は、前作の主人公に戦争孤児という背景があったことから、本作の着想を得たと説明。「(本作に描かれる孤児たちは)最初から汚れた格好をして路上にいたわけではなくて、空襲に遭う前は普通の家庭に育って、お父さん、お母さんがいたんだろうということがわかってくる中で、主人公は“普通の暮らしや文化”に囲まれた背景があった方がいいんじゃないかと思い、音楽家の娘という設定にしました」と明かした。さらに、「音楽というものの素晴らしさをこの映画で観客の皆さんに伝えられれば」と、作品に込めた思いを語った。
オーディションで琴子役に選ばれた小八重は、役作りを始めた当初、ピアノも楽譜もわからなかったという。「原先生たちが優しく教えてくれて……褒められると伸びるタイプだから(笑)」と会場を和ませ、「家に帰ってからもずっとピアノを練習していました。そしたら、7ヶ月でショパンが弾けるようになって」と振り返った。
西川監督作品への参加は初めてという竹野内は、小八重と初めて会った際、「すごく目がキラキラしていて。でも、その瞳の奥がものすごく力強かった」と感じたという。難しい役に挑む小八重について、「彼女が琴子をどのように演じていくのか、撮影が始まり楽しみでした」と語った。
本作のエンディング曲には、東北ユースオーケストラの演奏が使われている。同楽団は東日本大震災をきっかけに、坂本龍一の呼びかけによって設立された復興支援プロジェクト。原は、音楽を続けたいという思いを胸に秘めて生きる琴子と、震災で楽器や演奏の機会を失いながら再び音楽に向かった楽団員たちの姿が重なったと明かし、「演奏の力をお借りしたいと思って、お願いしました」と経緯を語った。
この日は、原が手がけた主題音楽「太陽と子どもたち」を、原の伴奏、東北ユースオーケストラとチェリスト・河内ユイコの演奏で披露。演奏を間近で聴いた小八重は涙を流し、「この映画のために東北ユースオーケストラの皆さんや原さん、いろんな人が協力して音楽を作ってくれたんだなと思うと、うれしくて、こんな大勢の方にここで聞いてもらえることもすごくうれしいです」と感謝を伝えた。
竹野内も「本当に音楽の力は言葉がいらない」とし、「優しくストレートに心に響くメロディーの中にも、枯れ果てた灼熱の大地に雨のしずくが染み渡って世界が蘇ったような……そういう力強さのある素敵な演奏だったと思います」と称えた。
西川監督は、40人の楽団員とエンディング曲を作ったことにも触れ、「子どもたちの力をもらいながら作られた映画」と表現。「戦争から81年経って、なかなか日本の過去の戦争は遠いものになっていっておりますけれど、なんとか若い人や子どもたちが観られるような戦争にまつわる映画を作ってみたいなというのが目標でした」と語った。