俳優、プロデューサーのケイト・ブランシェットが、10月26日に開幕する「第39回東京国際映画祭」に初参加することが決定した。ブランシェットが設立した「ディスプレイスメント・フィルム・ファンド」の支援によって製作された短編映画5作品の日本初上映(ジャパン・プレミア)にあわせて来日する。
【画像】日本初上映される短編映画の監督たち
ディスプレイスメント・フィルム・ファンド(Displacement Film Fund/DFF)は、紛争や迫害などによって避難を余儀なくされた映画制作者や、避難民としての経験を描く実績のある映画制作者を支援する基金。ブランシェットがロッテルダム国際映画祭のヒューバート・バルス基金と共同で設立し、2025年から短編映画を対象とした助成制度を開始した。ユニクロなどが創設パートナーとして支援している。
ブランシェットは「東京国際映画祭で、『ディスプレイスメント・フィルム・ファンド』の支援を受けて製作された第1弾のショートフィルムを、観客の皆さまにお届けできる機会に恵まれ、大変光栄に思います」とコメント。
続けて「衝突や迫害によって避難を余儀なくされたり、分断が引き起こされている現代の世界において、映画による物語の力は、他者の経験と私たちをつなぐ上で非常に重要な役割を果たします」と映画が担う役割を強調した。
また、「住処を追われたからといって、映画制作者が創造性を諦めるべきではありません。むしろ、彼らの物語こそが今、よりいっそう切実な響きを持つはずです」と訴えている。
東京国際映画祭では、基金の支援で製作された第1弾となる5作品を、10月30日午前11時10分からヒューリックホール東京(有楽町マリオン本館11階、開場:午前10時40分)で一挙上映する。
シリア出身の映画制作者2人が英国の難民申請者施設で過ごす日々を記録したハサン・カッタン監督の『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』、市民生活から兵役へと日常が一変した若いウクライナ人女性を描くマリナ・エル・ゴルバチ監督の『ローテーション』。
さらに、亡命したイラン人作家が異国の言語と向き合うラスロフ監督の『センス・オブ・ウォーター』、カブールのジムで女性だけに許された1時間を映すサダト監督の『スーパー・アフガン・ジム』、裁判と結婚式を前に葛藤する寡黙な男性を追うモ・ハラウェ監督の『ウィスパーズ・オブ・ア・バーニング・セント/残り香のささやき』の計5作品となる。
上映後にはゲストによるQ&Aも予定されており、ブランシェットに加え、『センス・オブ・ウォーター』のモハマド・ラスロフ監督と、『スーパー・アフガン・ジム』のシャフルバヌ・サダト監督が登壇する予定だ。
ブランシェットは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使としても活動。演劇・映像分野における貢献を称えられ、「第37回高松宮殿下記念世界文化賞」も受賞予定となっている。
■『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』(原題:Allies in Exile)40分/イギリス、シリア/監督:ハサン・カッタン
シリア出身の映画作家ハサン・カッタンとファディ・アル・アラビは、14年間にわたって紛争と映画制作の日々をともに過ごし、その時代を象徴する数々の瞬間を記録してきた。現在、2人は英国の難民申請者施設で暮らし、飛び交う爆弾に代わって、「待機」「官僚主義」「避難」によって形作られる新たな日常を記録している。
難民への敵意が高まる中、2人はカメラを自らの内面へと向け、友情や強制移動の意味を探っていく。未来を見通せない状況で、「撮影する」という行為が生き延びるための手段へと変わっていく過程を映し出す。
■『ローテーション』(原題Rotation)12分/ウクライナ、トルコ/監督:マリナ・エル・ゴルバチ
「ローテーション」とは、最前線から一時的に離れ、心身の回復を図る期間を指す。市民生活から兵役へと日常が一変し、新たな現実についていけず助けを求める若いウクライナ人女性が、催眠療法の儀式を体験する姿を描く。
■『センス・オブ・ウォーター』(原題Sense of Water)39分/イラン、ドイツ/監督:モハマド・ラスロフ
亡命という厳しい現実の中、イラン人作家は異国の言葉と向き合うことを余儀なくされる。再び筆を執るには、愛や怒り、喜び、悲しみといった感情を、新しい言語の中で見つけ直さなければならない。
書く力を取り戻すため、作家は記憶と忘却、失われた言語と新たな言語の間を往来する。人間であることや感情、意味をあらためて作り上げようとする心の旅路を描く。
■『スーパー・アフガン・ジム』(原題Super Afghan Gym)14分/ドイツ/監督:シャフルバヌ・サダト
カブール中心部にあるジムでは、一日のうち女性に許されたわずか1時間の利用時間に、主婦たちが集まる。昼休みの閉ざされた扉の向こうでトレーニングに励みながら、理想の体形や日々の暮らしについて語り合う女性たちの姿を映し出す。
■『ウィスパーズ・オブ・ア・バーニング・セント/残り香のささやき』(原題Whispers of a Burning Scent)28分/ソマリア、オーストリア、ドイツ
監督:モ・ハラウェ
重要な審理が行われる裁判の日、結婚式で大切な演奏を控えた寡黙な男性の私生活が、衆目にさらされる。結婚生活を利用していると非難された彼は、裁きや忠誠心、胸の奥に秘めた罪悪感を抱えながら、法廷と街、ステージの間を行き来する。
一度下せば後戻りのできない選択を迫られた男性の内面に迫り、献身と尊厳、喪失の狭間で揺れ動く本心を見つめる。