藤本タツキの同名漫画を是枝裕和監督が実写映画化した『ルックバック』が、イタリアで開催中の「第83回ベネチア国際映画祭」で現地時間11日、「Cinema & Arts(シネマ&アーツ)賞」「SIGNIS Award(シグニス賞)」「CinemaSara(チネマサラ)賞」の3つの公式独立賞(Collateral Awards)を受賞した。
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最高賞の金獅子賞を競うコンペティション部門に出品されている本作。映画祭本体の受賞結果が発表されるクロージングセレモニーを翌12日に控える中、それぞれ異なる理念や視点を持つ3つの審査団から相次いで高い評価を受けた。
このうち、世界カトリックコミュニケーション協会「SIGNIS」が選出するSIGNIS Awardの授賞式で、是枝監督は「本当にありがとうございます。とても小さな世界を描いている作品だと思ってここにやってきたので、こんな形で作品に光を当てていただけて、本当に光栄です」と感謝。
続けて、「この作品には原作の漫画がありまして、藤本タツキさんという漫画家さんが描いたものなんですけれども、そこに描かれている、ものを作る喜びとか苦しみとか、何か祈りのようなもの、願いのようなもの、そういう感情を映画でもしっかりと表現したいなと思って、この作品を作りました」と映画化に込めた思いを明かし、「そういう思いが、言語とか民族とか宗教とかを超えて届いたのかなと思って、とてもうれしいです」と喜びを語った。
審査員長のトーマス・クロール氏は選評を読み上げる前に、自身も『ルックバック』の公式上映を客席で鑑賞していたことに触れ、「映画館にいたとき、冒頭で観客があなたの名前を目にした瞬間、歓声が上がったんです。『また、あなたの映画だ!』というような感じでした。素晴らしかった」と、その時の反応を振り返った。
続いて選考理由として、漫画を描くことへの情熱で結ばれた藤野と京本の物語について、「人と人との絆が持つ深い力を繊細に捉え、互いに寄り添い合うことや友情という贈り物が、いかにして登場人物たちを孤独から解き放ち、世界における自らの居場所を見つけさせるのかを映し出します」と評価した。
さらに、芸術的才能を、感謝の念とともに受け取り、努力によって磨き上げるべき「超越的な贈り物」として捉えている点にも言及。罪悪感や悲劇的な喪失、過酷な運命の試練に直面しながらも、「自らの人生を形作った絆を大切に思う心からこそ、受容と和解が生まれる」とし、芸術の創造を「希望と癒やしをもたらす不朽の営み」であり、「悲しみを生きる目的へと変え、前へ進む勇気を与えてくれる『架け橋』」とたたえた。
SIGNIS Awardは、ベネチア国際映画祭のコンペティション作品を対象に、人間の尊厳や社会正義、平和などの価値を豊かに表現した作品を顕彰する独立賞。2001年から現在の名称で授与されている。
一方、第5回「Cinema & Arts賞」は、演劇・映画監督のアレッシオ・ナルディン氏の発案によって創設され、現代映画におけるさまざまな芸術表現の影響や、映画と舞台芸術をはじめとする多様な芸術との融合に光を当てる賞。『ルックバック』は、ドキュメンタリー部門の『襲名』とともに、日本作品として初めて最優秀作品賞に選ばれた。
さらに、ミラノを拠点とする映画文化財団「Cineteca Milano」が主催するCinemaSara賞でも最優秀作品賞を受賞した。同賞では18歳の若者たちが審査員を務め、創造的な独立性や、新世代に届く映画表現という視点からコンペティション作品を審査・選出する。
CinemaSara賞の授賞式には多くの学生たちも参加。終了後には学生たちが是枝監督のもとに集まり、次々とサインを求める光景が見られた。
公式独立賞(Collateral Awards)は、ベネチア国際映画祭の公式ラインナップ作品を対象に、映画祭とは独立した団体や審査員が、それぞれの理念や視点から優れた作品を選出するもの。芸術表現に着目するCinema & Arts賞、人間の尊厳や平和などを重視するSIGNIS Award、18歳の若者が審査するCinemaSara賞と、異なる評価軸を持つ3つの賞を『ルックバック』が獲得した形だ。
『ルックバック』は、漫画の腕に自信を持つ藤野と、不登校ながら圧倒的な画力を持つ京本が、漫画を描くことを通して結ばれていく13年間を描く。是枝監督が監督・脚本・編集を務め、出口夏希と蒔田彩珠がW主演。2人の子ども時代を七瀬ふうりと岡田六花が演じている。
第83回ベネチア国際映画祭では12日夜に開催されるクロージングセレモニーで、最高賞の金獅子賞をはじめとするコンペティション部門の各賞が発表される。
なお、映画『ルックバック』は9月11日より全国公開中。