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相米慎二監督、没後25年に名作3本がデジタルリマスター版で復活 『魚影の群れ』はベネチアで世界初上映

 『台風クラブ』『お引越し』などで知られる映画監督・相米慎二の没後25年を迎えた9日、『魚影の群れ』『東京上空いらっしゃいませ』『あ、春』の4Kデジタルリマスター版が、11月27日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次公開されることが発表された。

【画像】相米慎二監督のポートレート、作品に関する写真など

 これに先駆け、イタリアで開催中の「第83回ベネチア国際映画祭」のクラシック部門(Venice Classics)で現地時間3日に『魚影の群れ 4Kデジタルリマスター版』がワールドプレミア上映された。

 2001年9月9日、53歳の若さで亡くなった相米監督。生涯で13本の長編映画を残し、独自の「長回し」を駆使した演出で、国内外の映画人に大きな影響を与えてきた。近年は『台風クラブ』『お引越し』などが相次いで4Kデジタル化され、フランスをはじめ海外でも公開されている。

 1983年公開の『魚影の群れ』は、相米監督にとって4本目の長編映画。吉村昭の同名小説を原作に、青森県・大間を舞台に、マグロの一本釣りに命を懸ける漁師・房次郎を中心に、海に生きる男たちと女たちの愛憎を描いた。緒形拳、夏目雅子、佐藤浩市、十朱幸代らが出演している。

 4Kデジタルリマスター版は、今年のベネチア国際映画祭クラシック部門に日本映画として唯一選出。映画祭の上映会場の一つ「SALA CORINTO」で行われたワールドプレミアには、世界各国の映画関係者らが来場した。上映前には松竹の高川彩氏が登壇し、相米監督の代名詞ともいえる「長回し」と、今回の修復作業について紹介した。

 映画冒頭から5分以上にわたる長回しが展開される『魚影の群れ』。高川氏が代表的な長回しとして挙げたのは、娘のトキ子が歌いながら自転車で港町の坂道を駆け下りる場面、房次郎が偶然出会った元妻を土砂降りの中で追い続ける場面、そして巨大なマグロを一本釣りで引き寄せ、モリを打ち込むまでの壮絶な漁の場面だ。

 中でも物語の核となるマグロ漁は、4K修復でも特に難しい場面だったという。フィルムに付着したゴミや傷を取り除く際、海面の波の繊細な動きや光まで消してしまわないよう、一つ一つ丁寧に作業が行われた。

 今回の修復では、35ミリのオリジナルネガを4K解像度(4096×3072)で高精細スキャン。音声もオリジナルの音ネガから96kHz/24bitでデジタイズし、経年劣化によるノイズを処理した。撮影当時のスタッフや関係者の監修のもと、松竹映像センターで映像、音声ともに修復された。

 高川氏は上映を前に、相米監督が長回しについて、俳優が準備してきた「嘘の演技」を剥ぎ取り、極限状態で現れる「本物の人間」を撮るためだったと語っていたことを紹介。「ぜひこれらの長回しシーンを探しながら、3年前にこのクラシック部門で上映された相米監督の『お引越し』も思い出しつつ、この濃厚な140分間の人間ドラマに没入してください」と呼びかけた。

 1990年公開の『東京上空いらっしゃいませ』は、一度は天国へ行ったものの地上へ舞い戻り、本当の自分を取り戻そうとする少女を描いた作品。バブル期の東京を背景に、牧瀬里穂が映画デビューを飾った。

 1998年公開の『あ、春』は、死んだはずの父親が突然現れたことから巻き起こる騒動を、ユーモアとペーソスを交えて描いた家庭劇。1999年度のキネマ旬報ベスト・テンで日本映画第1位に選ばれた。

 4Kデジタルリマスター版のティザービジュアルはグラフィックデザイナーの畑ユリエが手がけ、『魚影の群れ』の「漁船」、『東京上空いらっしゃいませ』の「ワンピース」、『あ、春』の「ニワトリ」が散りばめられている。