■「好き/嫌い」と「認める/認めない」は全く別軸 運を掴み取るためにコツコツと積み上げる
【画像】『超RIZIN.5』シェイドゥラエフvs.マッキーほか全対戦カード
オリコンニュースの記者への不快感をYouTubeで表明したことをきっかけに、対面取材を受け入れてくれた青木真也(経緯はインタビュー記事前編を参照【https://www.oricon.co.jp/news/2478320/】)。
インタビューの前半では、ネットメディアとは「相容れない」と主張する真意、そして「俺はメディアに手のひらを返されたから」と過去のメディアとの関係性についてもじっくりと聞くことができた。後編でも格闘技メディアのあり方や、目前に迫った『ANGEL CHAMPAGNE presents 超RIZIN.5 浪速の超復活祭り』の朝倉未来戦の“触れ方”、そして自然消滅した古巣への思いについて語ってくれた。
(取材・文/オリコンニュース編集部長 五十嵐走平)
青木はオリコンニュースに対して「数字を追い求めるスタイルは相容れないけど、格闘技の取材に限らず365日ずっと足を使って現場に行ってるじゃないですか。数字にならないことをやりつつ、トータルで数字を取りにいくスタイルは、大したもんだって思いますよ」と評価している側面もある。また、“取材拒否しない”というポリシーの青木が唯一“出禁”にしているライターT氏についても「ちゃんと現場に行ってるし、明らかに数字が取れないだろう海外の試合の記事も書いてる。その姿勢については尊重してるし敬意は持ってますよ」と語る。
つまり、「好き/嫌い」と「認める/認めない」は全く別軸だと青木は考える。このインタビュー前日、「好きで認めている」記者に対して思うところもあったようだ。「昨日ムカついたことがあって。信頼していた記者から『朝倉未来戦の翌日にインタビューできますか?』って言われて、『え?』って思ったんですよ。試合終了のゴングが鳴った時点で俺とRIZINの契約は終わるし、チケットもPPVも売らなくていい。そんな状態でインタビューって『俺に得はなくね?』って。俺が売るものを分けて売らせてあげるようなフェーズに入るから、そこでのインタビュー依頼にすごい違和感を覚えた。結局はそういうマインドになっちゃうんだって」。
青木が「認めない」基準は、「ビッグマッチにしか来なかったり“いいとこ取り”するメディア。この業界に20年いて、いろんなことを怠ってきた人をたくさん見てきたから」と苦言を呈す。また、メディアと格闘技イベントのパワーバランスの変化についても、青木は敏感に嗅覚を働かせている。
「今って団体に批判的なことを書けないじゃん、取材拒否や出禁が怖いから。その気持ちも超理解していますし、メディアが団体の本営発表ばっかりになってるのも仕方ない。だけど、それじゃ面白いものはなかなか生まれないよね。メディアの色が出ないで、どこも画一的になって、結果的に見出しをどれだけ派手につけられるか、そこで競い合うしかなくなる。『取材拒否くらい上等だよ』って言えるメディアはないですよね」
だからこそ、思ったことをストレートにタイムリーに発信する青木真也は、ファイターという存在を超えて、メディアとしての影響力を持っている。世間体を気にするよりも、自分の言いたいことを包み隠さず伝えるからファンが多い。一方で「俺のことを『好き勝手やりやがって気に入らない』って人もいる。特に同世代のファイターからはウザがられてると思うよ」と批判の声も正面から受け止める。
現役生活の終わりが見えてきた中で、日本で最も大きな格闘技イベント『RIZIN』の年間最大の舞台で、いま最も影響力のある朝倉未来と戦う。とてつもない注目が集まる試合に「『運が良かっただけだ』とか、文句を言ってるヤツが多いのも分かるよ」と受け止めつつ、「でも俺は2006年からずっとやってきて、積み上げを怠ってこなかったからですよ」とプライドをのぞかせた。
「運が良かったのはもちろんだけど、それも俺が積み上げてきた結果だから。運を掴み取るための準備を一度もやめなかったし、いつでもバッターボックスに立てる準備をしてきたから、ただ単に運が転がってきたわけじゃない。ここまでプロで60戦以上やってきて、それなりに勝ってそれなりに負けたけど、俺が積み上げてきたことはちゃんとマスコミに書いてほしいし、評価もしてほしいって思いますね」
■「一瞬の数字を追い求めると、スジの悪い客が増える。僕のお客さんは心地よい空間を求めている」
朝倉未来との試合は『超RIZIN.5』の目玉カードであり、多くのファンが期待している一戦だが、青木はYouTube、SNS、noteで朝倉に対してほとんど言及していない。数字にこだわるのであれば、「朝倉未来なんて相手にならない」や「負けた相手のシェイドゥラエフと仲良くするな」などと発信すると、アクセスは一気に増えるだろう。なぜ青木は仕掛けないのか。青木は「いい質問ですね」と答えてから、言葉をつないだ。
「お互いにSNSとかで『この野郎』ってやっても、得がないですよね。向こうもそれが分かってるから、俺について何も言ってこないんでしょう。朝倉未来との試合が決まって、俺のYouTubeが劇的に再生されたり、noteが売れたかっていったら、7月20日の試合決定会見の時にちょっと山ができただけで、登録者が何万人も増えたわけじゃない。どういうことかって言うと、結局は1イベントにすぎないんですよ。noteなんて、ドーピング騒動の時のほうがよっぽど売れた(笑)。朝倉未来についてわーわーやってもnoteの売り上げはそんなに変わらないだろうし、スジの悪い客が増えると既存のお客さんが嫌な顔をするので。過去にもそういうことがあったし、僕のお客さんは心地よい空間を求めているので。朝倉さんもYouTubeのメンバーシップをやってるし、試合を通じてお互いの箱庭を固めていく。揉めると話題になるけど、お互いに困る客も増えちゃうから。これってSNSのバズリを求める一歩先なんですよ」
大きな注目を集める試合だが、目先の利益よりも長期的な場の快適度を優先する。「たぶんABEMAとかは揉めてくれたほうがうれしいだろうし、そこは申し訳ない気持ちもありつつ、番組出演とかプロモーション稼働はやってるほうだから」と各方面への配慮も忘れない。
とはいえ、油断できないのが青木真也だ。昨年11月の『ONE 173』の手塚裕之戦では、前日計量のフェイスオフで青木が手塚を突然投げ飛ばして、あわや乱闘寸前の大騒ぎになった。「あれはいい仕事したでしょ」とニヤリとして、話題は“古巣”のONE Championshipへ移っていった。
2012年にONEに参戦した青木は、2025年まで13年も戦ってきたが、その別れは青木にとって後味の悪いものとなった。「ONEには感謝されることはあれど、恨まれることはないって思ってる。勝ち負けはあったけど、試合前も試合後も俺がニュースを作ってきたんだから、『青木ありがとう』だろって思うけど、そこら辺の感覚が最後まで合わなかったなって。どういう別れ方かって聞かれるけど、連絡がなくなっておしまい。別れ話もないよ」と淡々と明かした。
■RIZINとは単発契約「だからこそ1回のチャンスで成果を出さないといけない」
ONEとの紆余曲折を経て、舞い戻ってきたRIZINのリング。最近は格闘技から離れていたPRIDEやDREAMファンも、青木真也に吸い寄せられるように9月10日のリングに“集結”するだろう。オールドファンの期待を感じつつ、青木は2007年に行われた奇跡のイベント『やれんのか!大晦日!2007』を思い返した。
「あの大会には2万5000人くらいのお客さんが集まってくれたけど、俺が考える純粋な俺のお客さんって、あそこにいた人しかいないんじゃないかな。今回の朝倉未来戦も『やれんのか!』のファンの掘り起こしだと思ってる。オールドファンを呼んでくるっていう仕事もできたかな。それに、PRIDEやDREAMが宙ぶらりんで終わってるから、RIZINだっていつまでも続くなんて信じてないから」
RIZIN所属ではなく、今回は単発契約の参戦だから言える、厳しさも感じさせる一言。しかし、それは裏返すと「単発だからこそ、1回のチャンスで成果を出さないといけないし、『次はいらない』って言われたら仕事がなくなる。だからこそ結果を出したいし、勝ってリング上から『どうだチャトリ!』って言いたいですよ。日本にいるだろうから『飯でも食わないか』って。みんなビックリするだろうけど」とほくそ笑んだ。
長時間に及ぶ取材も終わり、最後に改めて試合1週間前の大事な時期に取材をさせてもらえた感謝と、そして取材のきっかけとなった発言について謝罪を伝えると、「お互いの領分でベストを尽くしましょう。それだけです。マスコミなんだから、面の皮を厚くやってくださいよ。俺も人の言葉で飯を食ってるし、RIZINの大会が終わった直後に感想をnoteで出して『またRIZIN乞食しちゃいました』って開き直ってるからさ。まぁ、また話を聞きたくなったら、来てくださいよ」と、笑顔で記者の肩を軽く叩いた青木真也だった。