来月フランスで開催される「第79回カンヌ国際映画祭」監督週間部門に、日本の長編アニメーション映画『我々は宇宙人』の出品が決定した。企画・脚本・監督を務めるのは、YOASOBI「優しい彗星」などで知られる29歳の新鋭、門脇康平。俳優の坂東龍汰と岡山天音が声のW主演を務める。
【動画】長編アニメーション『我々は宇宙人』特報
本作は、映画レーベル「NOTHING NEW」が手がける初の長編アニメーション。これまで『NN4444』や『〇〇式』などで国内外の映画祭に名を刻してきた少数精鋭の制作チームが、新たな映像表現に挑んだ意欲作だ。
門脇監督は、1996年生まれ。東京藝術大学で絵画を学び、舞台映像やCMのディレクションを経てアニメーション作家として活動。写実的な美しさと物語の必然性を両立させる表現力を持ち、キャラクターの動きや背景美術の細部に至るまで意味を宿らせる緻密な演出が持ち味だ。
既存の枠にとらわれない柔軟な発想で未体験の映像表現を追求する門脇監督にとって、本作は初の長編アニメーション。子ども特有のリアルな身体性を描くため、キャラクターに近い子役をオーディションで起用し、実際のシーンに近い状況で実写のプレビズ撮影を行うなど、ほぼ全カットで手間を惜しまない制作手法を採用している。
昨年、映画『国宝』が上映されて話題となったカンヌ国際映画祭監督週間への選出を受け、門脇監督は「世界中の方々に作品をご覧いただく機会をいただけたことを、大変光栄に思っております」と感謝を述べている。
物語は、平成の田舎町で出会った内気な少年・翼と、“特別な存在”である暁太郎の関係を軸に展開。ある出来事をきっかけに、2人の関係が大きく変化していく様子を描く。ノスタルジックな日常と不穏な展開が交錯するストーリーが特徴で、「宇宙人」というタイトルが象徴する意味にも注目が集まる。
主人公・翼の声を務める坂東は「脚本を初めて読んだときに、必ず多くの人の心を動かす映画になると確信した」とコメント。暁太郎役の岡山も「美しく歪んだ世界に吸い込まれました」と語り、作品への手応えをにじませた。
なお、幼少期の翼と暁太郎の声は、オーディションで選ばれた槙木悠人(翼幼少期)・中込佑玖(暁太郎幼少期)が演じる。
音楽には、藤井風や米津玄師の楽曲プロデュースを手がける音楽家のYaffleが参加。「醜さも含めた人間の美しさを音楽に詰めました」と語るなど、映像と音楽が一体となった没入感の高い作品に仕上がっている。
カンヌ国際映画祭は現地時間5月12日から23日まで開催予定。日本発の新たな才能がどのような評価を受けるのか期待が高まる。
■門脇康平監督のコメント
この度、カンヌ国際映画祭・監督週間に選出いただき、世界中の方々に作品をご覧いただく機会をいただけたことを、大変光栄に思っております。
『我々は宇宙人』は、誰もが知っている普遍的な喜びや悲しみ、痛みといった感情を、非常に個人的な思い入れを込めたキャラクターとストーリーによって描いた作品です。
本作のキャラクターたちが世界の皆さまにどのように受け止めていただけるのか、楽しみにしておりますし、多くの方の心に届く作品になると信じています。
■坂東龍汰さんのコメント
映画『我々は宇宙人』で、翼の声を担当させていただきました。
脚本を初めて読んだときに、必ず多くの人の心を動かす映画になると確信し、門脇監督をはじめスタッフの皆さんが持つ尋常ではない熱量に触れ、僕も全力で応えねばという気持ちになりました。
収録では、暁太郎役の岡山天音さんが隣で、まるで湯気が立ち上るような迫力のある声を放たれていて、毎秒身体が痺れるような感覚でした。
そして、カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出されたことも、心からうれしく思います。日本にとどまらず、世界中の方々に広く届く作品になることを祈っています。
■岡山天音さんのコメント
最初に本編の映像を観させていただいた時、その美しく歪んだ世界に吸い込まれました。
門脇監督とのやり取りの中でも、今作が監督自身の血が色濃く混ざった作品である事を改めて知り、大人になった暁太郎の声を担わせていただく中で、必死で暁太郎の輪郭を編もうとしたことを覚えています。
同時に、共演の坂東龍汰さんが体現する翼の光と影に、真隣で触れていた時間が、暁太郎としても、自分自身としても、とても感じ入る特別な時間でした。
カンヌ国際映画祭の監督週間で上映される事も含め、多くの方に、主人公2人の小さくて大きな物語が届く事を願っております。
■Yaffleさんのコメント
隠してる胸の奥を槍でぐりぐりつき回されるような映画です。圧倒的に美しいアニメーションという箱に、若き情熱たちが詰めた、死ぬまで忘れられないようなストーリーが入っています。一緒に観た人たちといろいろ話して理解が深まるような作りです。醜さも含めた人間の美しさを音楽として一緒に詰めました。
■ジュリアン・レジ(カンヌ国際映画祭「監督週間」アーティスティックディレクター)のコメント(日本語訳)
本作は、異なる社会的背景を持つ二人の少年たちの成長と友情の物語です。
印象的なビジュアルスタイルもさることながら、この映画の真骨頂は語り口にあります。断片的な記憶をたどるように物語は進み、人の記憶がいかに個人の歴史や経験した現実を塗り替えていくかを、繊細な感性で描き出しています。