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関西エリア「粉もんにはソース」の牙城を崩せるか? 使い道をあえて狭める“専用ぽん酢”という逆転の発想

 鍋や餃子、焼き魚などさまざまな料理に使える万能調味料として親しまれてきたミツカンの「味ぽん」。なんとその味ぽんから、関西エリア限定で、しかも粉もん専用の『大阪無限粉もんソースby味ぽん』が発売された。たこ焼きなど“粉もん”といえばソースが定番とされる中、“ぽん酢発想のソース”という変化球で関西のソウルフード界に乗り込んだ本商品。万能調味料として広く浸透した味ぽんが、なぜ誕生から62年経った今、“地域限定““専用化”という逆転の発想に挑んだのか。その狙いを聞いた。

【貴重写真】1964年発売時の『ミツカン ぽん酢<味つけ>』パッケージ

■“さらさら”では絡まない たこ焼きに潜んでいた“未解決の不満”

 2月18日、近畿エリア2府4県という関西限定で発売がスタートした『大阪無限粉もんソースby味ぽん』。その名のとおり「“粉もん専用”の味ぽん」だ。

 しかし、粉もんといえば、その美味しさを引き立てるのはソースが定番。大阪にはソウルフードの粉もん人気を表すように、地ソースがなんと10種類以上も存在するという。そんな中で、味ぽんはなぜ、ぽん酢ベースという変化球で市場に乗り込んだのか。

 生みの親である、ミツカンのマーケティング企画部・田中史恵さんは、「きっかけは生活者の使い方にあった」と話す。

「味ぽんでは60周年を機に、日本各地の食文化を地元の方々とともに盛り上げる『ご当地味ぽん』シリーズをスタートしました。各地域の食文化を調査する中で、大阪でたこ焼きについてインタビューを行ったところ、味ぽんの需要があることが分かったのです」(マーケティング企画1部調味料2課主任・田中史恵さん/以下同)

 大阪では自宅でたこ焼きを楽しむ家庭も多く、いわゆる“大阪あるある”として知られている。田中さんがインタビューで大阪人に話を聞いたところ、多くの人が「大好きなたこ焼きを飽きずに食べ続けたい」と語ったという。そのため、自宅でたこ焼きを作る際には、ソースやマヨネーズだけでなく、めんつゆやケチャップ、スパイスなど、冷蔵庫にある調味料をずらりとテーブルに並べ、“味変”を楽しみながら食べているそう。

 中でも味ぽんは、「口の中をリセットしたい時に使う」という声が多く挙がった。しかし一方で、「たこ焼きを割って中に味ぽんを染み込ませて食べている」という声もあったという。従来の味ぽんはさらさらしているため、表面にかけても絡みにくい。結果として“ひと手間”が必要になり、この使いづらさが、粉もんとの相性における課題だった。

 そこで、「もっと味ぽんでたこ焼きを美味しく楽しめる提案ができるのでないか」と考え、田中さんらチームは1日10件以上のたこ焼き店を巡り、粉もんに合う美味しいソースの構造を徹底研究。目指したのは「粉もんに負けないコク」と「味ぽんならではのさっぱり感」の両立だった。

「甘さ→スパイス→酸味」という三段階で味が変化する設計で、玉ねぎやりんごによる甘さ、10種類以上の香辛料によるスパイスの奥行き、そしてぽん酢ならではの酸味で後味を締める。さっぱりと口をリセットできることで、また次のひと口が欲しくなる、大阪人が求めていた“無限に食べられる味わい”を実現した。

 多くの人々にインタビューする中で「『たこ焼きがないと生きていけない』という人がいるくらい、関西人はたこ焼きに対して熱量を持っていると感じた」と語る田中さん。「粉もん×味ぽん」はご当地メニューに目をつけたゼロからの提案ではなく、生活者の使い方を起点にアップデートした商品だったのだ。

■「何にでも使える」万能調味料が抱えた課題…あえて“専用”を打ち出したワケ

 ところで、大阪と味ぽんには実は深い関係がある。味ぽんは1964年、水炊き文化が根付く関西で誕生した。当初は『ミツカン ぽん酢〈味つけ〉』の名で大阪を中心とした関西エリアで試験的に販売を開始。醤油と柑橘果汁がまろやかに混ざり合った鍋専用調味料として人気を得、1967年には『ミツカン 味ぽん酢』の名で全国に販売されることとなった。

 しかし、関西では好調だった味ぽんだが、鍋といえばしょうゆ味やみそ味が主流だった関東ではなかなか売れず、苦戦をしいられることに。なんとかその美味しさを広めたいと考えた関東の営業担当者は、その年の冬、早朝からコンロと鍋と食材を積んだ屋台カーを引いて東京・築地の卸売市場に出向き、味ぽんとともに水炊きを小売業者に振る舞い、販路の拡大につなげていったという。

 こうして、大阪から全国へと拡大していった味ぽんは、今や認知率95%のブランドへと成長。鍋だけでなく、焼肉、さしみ、餃子といったメニューの調味料として、また煮物や炒めものなど調理の味付けに使う調味料としても用途を広げているのはご存じの通りだ。

 ちなみに、現在も「エリア別消費量では関西のほうが強い」と田中さん。とくに近畿地方はなんでもぽん酢をかける文化が根づいていて、全国平均の約1.4倍を記録しているのだとか。

 そんな味ぽんにも、近年、直面した課題があった。“味ぽん=鍋、和風”といったイメージが根強く浸透してしまっていることだった。

「調味料は1世帯に1本というのが通常かと思うのですが、国内の世帯数がピークアウトしていく中、今後、消費が伸びにくくなるのは目に見えています。“味ぽん=鍋、和風”といったイメージを脱却し、これまでとは違う軸で味ぽんブランドの魅力を伝え、生活者の方々に新しい楽しみ方を提案し、味ぽんの可能性を広げる必要があると考えました」

 そこで“おいしさ、ぽんぽん広がる、味ぽん”をコミュニケーションコンセプトに、HP等でコロッケやカレーライス、アイスクリームなど幅広い使い方の提案を行うなど、味ぽんの領域の幅広さを訴える新たな施策に次々挑戦。「ご当地味ぽん」もその考えの中から生まれたひとつだった。

 各地域の食文化に合わせた“専用調味料”として展開することで、「味ぽんはこんな使い方もできるのか」という新たな気づきを生み出し、最終的には通常の味ぽんの利用シーンを広げていく狙いがあるという。個別の商品で新たな需要を掘り起こしながら、ブランド全体としての使用機会を増やしていく――調味料市場が伸びにくい中での、一つの戦略でもある。

■3地域とコラボした「ご当地味ぽん」 鍵は“地域の魅力×味ぽんの親和性”

 「ご当地味ぽん」は、日本各地の名産品やメニューに注目し、地元の人や企業とともに地元の人のお墨付きの逸品を作ることをコンセプトにシリーズ化。これまで「大阪無限粉もんソース」に先駆け、第1弾として『味ぽんfor宇都宮餃子』、第2弾に『北海道バタぽんby味ぽん』を発売してきた。

 エリアを選定するにあたっては、「そのエリアとの関係性とともに、“ご当地ならではの魅力×味ぽんとの親和性”の掛け算がどこまで大きくできるかを重視してアイデアを出してきた」と田中さん。

 例えば、第1弾の「宇都宮餃子」は餃子通りがあったり、マンホールに餃子が描かれていたり、街灯が餃子の形をしているなど、街をあげて餃子を盛り上げようとしている宇都宮の餃子愛に着目。30種類以上を試食し、複数の酢や醤油、ラー油を組み合わせて味を設計し、餃子との相性を徹底的に追求した。

 第2弾の「北海道バタぽん」は、「野菜や肉、魚など北海道の名産品を味ぽんでさらにおいしくしたい」という思いから開発。料理好きな人たちの間で“悪魔的なおいしさ”と言われているバターとぽん酢の組み合わせに着目し、味ぽんをベースにコクがあり風味が高い北海道産発酵バターを配合。“おいしい”の提供とともに、調理の際にバターを必要量取ったり、溶かしたりという手間が省ける“手軽さ”も叶えた。

 苦難を重ねながらも、味ぽんの可能性に期待を寄せ、3商品を生み出してきた「ご当地味ぽん」。「今後も各地域を盛り上げるべく、新たな商品を開発していきたい」と田中さんは目を輝かせる。

「そのエリアに出向いて地元の方と会話をするのがすごく楽しいんです。そこで見つかるヒントがたくさんありますので、今後も地元の方々のお声をもとに、その地に根付いた食材やメニューをもっと美味しく楽しめるよう、新しい需要創造ができたらと思っています」

 次はどこの地域のどんなメニューに合ったぽん酢が登場するのか。「ご当地味ぽん」のこれからがますます楽しみになってきた。

(取材・文/河上いつ子)