宮田俊哉、ピクサー・アニメーション・スタジオに突撃 『私がビーバーになる時』アートディレクターから描き方も伝授

 公開中のディズニーピクサーの最新作『私がビーバーになる時』より、のんびり屋の癒やし系ビーバー〈ローフ〉の日本版声優を務めた宮田俊哉が、アメリカ・カリフォルニアにあるピクサー・アニメーション・スタジオに突撃訪問。今作の製作に携わったクリエイターたちへ直撃インタビューを敢行し、ローフのキャラクターデザインを担当したキャラクター・アート・ディレクターからローフのイラストの描き方をレクチャーしてもらったりと、ここでしか体験できない貴重な出来事の数々を振り返るレポートが到着した。

【写真】真剣に話を聞く宮田俊哉

 本作は、動物好きの大学生メイベルが、おばあちゃんとの思い出が詰まった森を高速道路計画から守るため、極秘テクノロジーで“ビーバーの姿”になって動物たちの世界へ飛び込む物語。見た目はビーバー、中身は人間のまま潜入した先で、人間の常識が通じない“とんでもない”動物社会に直面する。元の体に戻るタイムリミットが迫る中、メイベルは動物たちとともに森を守る作戦を仕掛けるが…。

 アメリカ・サンフランシスコに到着した宮田を待っていたのは、これまで数々の名作を生み出してきたピクサー・アニメーション・スタジオの広大な敷地。クリエイターたちが作業をするオフィスや最新機器の揃ったスタジオはもちろん、社員たちがリフレッシュするためのプールやバスケットボールコート、サッカー場、レストランなどさまざまな設備がそろった環境に、宮田は思わず「プールもサッカー場もあるんですか!? ここまでなんでも揃っていると、スタジオというよりひとつの街みたい!」と大興奮。

 興奮冷めやらぬ中、スタジオ内を探検しながら向かった先々には、本作に関わったクリエイターたちの姿が。宮田は『私がビーバーになる時』の制作の裏側を知るべく、クリエイターたちに突撃インタビューを敢行した。

 まず話を聞いたのは、ビジュアルエフェクトを担当したマックス・ギルバート。宮田が「マックスさんは『わたビバ』でどんな作業を担当したんですか?」と尋ねると、マックスは「この作品には水や木々、火、そしてかわいい動物たちが動き回る場面など、たくさんの自然が登場しますよね。私はその自然いっぱいのシーンをよりリアルで美しく見せるために、さまざまなビジュアルエフェクトを作りました」と解説する。

 さらに、水の動きを表現するビジュアルエフェクトを実際に作る様子を見せてくれながら、「水の動きはとても複雑なので、表現するためにたくさんのレイヤーを重ねます。少しずつ波やしぶきを加えていくことで、リアルに見えるようになるんです」と制作のこだわりを説明する。

 その細かな作業を目の当たりにした宮田は「一滴一滴にまでこだわりが感じられますね!こんなに細かい仕事なんだ!」と驚きを隠せない様子で、「こんなにリアルに見えるのに、実写の映像とは違うアニメーションならではの臨場感もすごくある。そのリアルとアニメーションのバランスがすごい」と語ると、マックスは「その通りです。エフェクトチームのゴールは、映像をとにかくリアルに見せること。でも同時に、アニメーションの世界にフィットするように調整しなければいけません。そのバランスを取るのは難しいけど、とても面白い仕事なんです」と、ピクサーならではの徹底したこだわりを明かした。

 続いて宮田が訪ねたのは、アートディレクターのハッサン。ハッサンは自身の仕事について「私の役目は、この映画にとって正しい色とトーンを見つけることです。映像を作る前の段階で脚本を読み、映画全体の色の設計図となる“カラースクリプト”を作ります。全体の色味や雰囲気を最初に決め、それをもとにアニメーターが映像を作っていくんです」と明かす。宮田が「脚本を読んだ時点で一番悩んだシーンはありますか?」と尋ねると、ハッサンはキング・ジョージの登場シーンを挙げ、「観客が初めてジョージに出会う大事な場面なので、とてもこだわりました。夕日に照らされたオレンジのトーンや、少しブルーがかったトーンなど色々試したんです。最終的には、逆光の中でシルエットとして登場させることで観客に『怖い王様なのかな?』と思わせておいて、クローズアップするとコミカルでフレンドリーな表情が見えるようにしました」と制作秘話を公開した。

 さらに、「実は、動物大評議会で王たちが登場するシーンでは、『セーラームーン』の変身シーンでキャラクターそれぞれに違う色の光が差す映像を参考にして、登場するときの王たちにそれぞれ違う色の光が差すようにしたんです」と語り、思わぬ日本作品からの影響も明らかになった。

 続いて宮田は、キャラクター・アート・ディレクターのアナ・スコットのもとへ。本作でローフのキャラクターデザインを担当したアナが、特別にローフの描き方を直々にレクチャーしてくれることに。ペンと紙が用意されると、宮田は「僕は絵が苦手だから、上手く描けるかなあ」と不安そうな表情。しかしアナから「大丈夫、絶対うまく描けるから安心して」と励ましを受けて宮田は苦手な絵に挑戦。アナのお手本を見ながら、鉛筆で大まかな下書きをしてマーカーペンでディテールを描き込んでいくと、少しずつローフの姿が完成していく。

 出来上がったイラストを見たアナは「とても上手!完璧だよ!私よりあなたの方が上手かもしれない」と大絶賛。宮田は「みんなから僕は絵が下手だと思われているので、はやくみんなに見せたいです!日本に帰ったら『僕はピクサーでイラストの描き方を習ってきたんだ!』ってみんなに言ってまわります。絵が苦手な僕でもちゃんと習えば描けるんだって分かって楽しかったです!」と満面の笑みを見せた。

 ピクサー・アニメーション・スタジオを訪問し、作品の魅力、そしてピクサー作品の魅力に触れていった宮田。「一つ一つの作業が本当にプロフェッショナルで…。改めて、誰が欠けてもこの映画って完成しなかったんだなと思いました。映画を見ているとエンドロールで何百人という名前が出てくるじゃないですか。その一人一人が本当に高い技術と愛を持って、この作品を作ってくださったんだなというのを改めて実感しました」と、その貴重な体験を振り返った。

 併せて解禁されたのは、高速道路の建設をめぐって動物大評議会の怒りを買い、動物たちから命を狙われているジェリー市長を助けるために、メイベルとローフ、トカゲのトムがジェリー市長の車に乗り込み、スマートフォンの音声読み上げ機能を使って意思疎通を試みるシーン。見事な連携プレーでジェリー市長のスマートフォンを奪うと、突然現れた動物たちにおびえるジェリー市長に向かってメイベルが「私達はあなたの友達(赤いハート)」「あなたの身が危険。私達の言う通りにして」と呼びかけるが…。

 本作の公開以降、SNS 上で話題になっているのが、“人間目線”か“動物目線”かによって、動物たちの表情が変わる演出。動物とコミュニケーションが取れない人間から見る動物たちの顔はつぶらな目で感情が読み取れない表情なのに対し、動物目線になると途端に白目が大きく表情豊かになり、動物たちがより“人間らしく”見えるようになる。

 この演出には、スタジオジブリの名作『平成狸合戦ぽんぽこ』が大きな影響を与えているそうで、ダニエル・チョン監督は「動物たちに二種類の見た目があるというアイデアのインスピレーションのひとつは、スタジオジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』です。その作品では、状況に応じて動物たちの目が点のようだったり漫画のような目だったりする描写があり、その工夫からとても大きな影響を受けています。ジェリー市長とスマートフォンでコミュニケーションをとろうとするシーンでは、誰の視点かによって、動物たちの顔を点のような目と漫画のような目の間を絶えず行き来させるように工夫しました。これはとても大変だったのですが、その切り替えを上手く調整するのは本当に楽しいチャレンジでした」と明かしている。ぜひ動物たちの表情の差にも注目しながら“動物たちの世界“に入ったことが一目でわかるように込められた工夫とこだわりにも注目だ。