サントリーは、2026年の国内酒類事業およびビール事業の方針を発表した。国内酒類市場は、新型コロナウイルス禍による落ち込みから回復基調にある一方、実質賃金の伸び悩みや人口減少といった構造的な課題を抱えている。かつてのように数量拡大による成長は見込みにくく、企業には付加価値をどう高めていくかが問われる局面に入っている。こうした環境を背景に、サントリーが打ち出したのが「お酒の価値を再発見する」という方針だ。
10月以降にビール化が予定されている金麦
同社は、価格や量を軸にした競争から一歩踏み込み、飲むシーンや気分、ライフスタイルに寄り添うことで市場を再び成長軌道へ導く。同社は2026年、国内酒類事業全体で前年比103%の売上成長を計画しており、成熟市場の中で価値創造による拡大を目指す姿勢を鮮明にしている。
実際、消費者のお酒との向き合い方は大きく変化。家で飲む機会が増え、同社の調査では1本のビールに時間をかけて楽しむ人も多いという。「今日は軽めに」「今日はしっかり味わいたい」と飲み分ける行動が定着し、健康を意識して飲まない日を設けることも特別ではなくなった。同社2026年戦略は、こうした日常の変化を前提に組み立てられている。
プレミアム領域では、「ザ・プレミアム・モルツ」をリニューアルし、香りや深いコク、心地よい余韻をより際立たせた。飲む時間が長くなる傾向を踏まえ、ゆっくり味わう体験そのものを価値として訴求する。一方で、「ゴクゴク飲みたい」「一日の区切りに一杯」というニーズには「サントリー生ビール」を軸に対応。のどごしを重視した味わいに磨きをかけ、飲食店での展開やスポーツ観戦シーンなど、日常接点の拡大を図る。
2026年の大きな転換点となるのが、10月以降に予定されている「金麦」のビール化だ。これまで新ジャンルとして親しまれてきた金麦を、価格帯はそのままにビールへ移行する。価格と品質のバランスを重視する層を取り込み、エコノミー市場の活性化を狙うもので、将来的には3,500万ケース規模を目標に掲げる。日常の晩酌に寄り添ってきた同ブランドを進化させることで、市場全体の底上げにつなげたい考えだ。
健康意識の高まりを背景に、糖質ゼロやノンアルコール分野への投資も継続する。糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」は飲みごたえと爽快な後口を両立した商品として拡大を見込み、ノンアルコールの「オールフリー」も中味を刷新。「お酒を我慢するための選択肢」ではなく、「気分を切り替えるために選ばれる飲料」としての位置づけを強める。
サントリーは、2026年を主要ブランドの刷新や酒税改正への対応が重なる節目の年と位置づけている。プレミアムから日常、ノンアルコールまで幅広い選択肢を揃え、「どれを選んでも自分に合っている」と感じられる市場づくりを進めることで、成熟した国内酒類市場に新たな成長の余地を見いだしていく構えだ。