第二次世界大戦下、ナチスはユダヤ人迫害や教会を弾圧し圧政を進めていた。そのナチスと闘い続けた実在のドイツ人牧師、ディートリヒ・ボンヘッファー(1906年ー1945年)。彼が アドルフ・ヒトラー 暗殺計画に関わった経緯と、これまであまり語られてこなかった半生を描いた初の映像化作品『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』が、11月7日から公開中だ(配給:ハーク)。
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平和を祈る聖職者でありながら、彼はいかにしてスパイ活動に身を投じ、ヒトラー暗殺の共謀者になっていったのか?彼の死から80年を迎えた今年、家族思いの青年であり、勤勉なキリスト者であり、そして抵抗運動の闘士と化して生き抜いた39年間の短くも濃厚な生き様と、“20世紀を代表するキリスト教神学者の一人”と呼ばれる英雄の知られざる人物像が明らかとなる。
監督・脚本・製作を務めたのは『ハドソン川の奇跡』(2016年)や『博士と狂人』(19年)など実話を得意とする名シナリオライター、トッド・コマーニキ。知られざる真実に斬り込む人間ドラマに定評のあるコマーニキが、ドイツでは誰もが知る歴史上の人物であり、現在もなお人々の思想に大きな影響を与え続けるひとりの男の生涯を描き切った。
ボンヘッファー役を演じるのは、舞台演劇出身のドイツ人俳優ヨナス・ダスラー。2019年、ファティ・アキン監督作『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』で主人公の連続殺人犯を演じ、ドイツ映画賞の主演男優賞にノミネートを果たし、後にVariety誌「注目すべきヨーロッパの若手映画人10人」にも選出されている。
休養期間にも関わらずボンヘッファー役を引き受けたヨナス・ダスラーについてコマーニキ監督は「彼はボンヘッファーを理解し、このオファーを受け入れる広い魂をもっていました。彼は私の想像をも飛び越えてきた」と称賛を送っている。
共演には『イングロリアス・バスターズ』『名もなき生涯』のアウグスト・ディールや『エイリアン:ロムルス』のデヴィッド・ジョンソンなどが名を連ねる。
ボンヘッファーの物語の始まりについて、プロデューサー陣は「10年前にこの企画が始まったのです。最初に取り組んだのは、台本を完成させることでした」「まるで夢のようでした。10年がかりで撮影が実現しました。最高の技術チームです」と長かった道のりを感慨深く振り返る。
プロデューサー陣さは「監督が素晴らしく全てがうまくいった」「監督をセットで観ると真の役者のための監督だと思った」とコマーニキ監督の手腕を絶賛。コマーニキも「真の政治的、精神的勇気についての物語だ。マジックではなく、私たちの中に存在するものを描いた。肯定よりも大きな勇気を求められる」と本作への思いを明かしている。
さらに、コマーニキ監督は、本作が日本で公開されることについて「私は日本の文化が大好きです。黒澤明監督は私が大好きな映画監督です。9年前、前作『ハドソン川の奇跡』が日本でヒットし感謝しています」とコメント。「(この映画を見れば)世界を見る目変わるでしょう」とボンヘッファーの言葉のように力強い言葉を寄せ、「悪魔を相手に闘った一人の男の、この驚くほどタイムリーな映画。私たちは今勇気が足りない世界に生きています。ボンヘッファーは私たちに思い出させてくれるのです、誰でも世界を変える勇気を持てることを」と語っている。
ボンヘッファーがその短い生涯を終えてから80年――。悪に沈黙しなかったボンヘッファーの勇気ある人生を描いた本作には、今だからこそ彼の言葉を知り、語り継がなくてはならない大切なメッセージが詰まっている。