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フランシス・フォード・コッポラ監督、構想40年・私財186億円を投じて完成させた映画『メガロポリス』

 『ゴッドファーザー』シリーズや『地獄の黙示録』など数々の名作を手がけた巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督の14年ぶり最新作『メガロポリス』が、6月20日より公開中(配給:ハーク、松竹  提供:ハーク、松竹)。1980年代から構想約40年、自身の私財1億2000万ドル(約186億円)を投じて完成させたこん身の一作だ。

【動画】映画『メガロポリス』アメリカに人工衛星が落下(本編映像)

 本作は、コッポラ監督が幼少期に観たH.G.ウェルズ原作『来るべき世界』に着想を得て1980年代に脚本を構想。2001年にはロバート・デ・ニーロやポール・ニューマン、レオナルド・ディカプリオら豪華キャストで台本読み合わせを行ったが、同年9月11日の同時多発テロを受けて計画が中断。07年には資金難で頓挫しかけたが、コッポラは「作り方を知らない映画こそ、映画が自分に作り方を教えてくれる」と語り、約300回の脚本改稿を経て製作を決意。自身のワイナリーの一部を手放し、私財1億2000万ドル(約186億円)を投じて撮影を実現させた。

 舞台は、富裕層と貧困層の格差が深刻化するアメリカ共和国の大都市ニューローマ。古代ローマの叙事詩を現代アメリカに重ねた構想について、コッポラは「アメリカが共和制ローマの再来であることは明らか。古代ローマを模した現代のニューヨークを舞台にしたローマ叙事詩を書きたかった」と語る。

 主演は、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15年)で注目され、『マリッジ・ストーリー』(19年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされたアダム・ドライバー。天才建築家カエサル・カティリナ役を演じる。対立する新市長フランクリン・キケロを、『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)、『マルコムX』(92年)などで知られるジャンカルロ・エスポジートが務め、キケロの娘ジュリア役は『ゲーム・オブ・スローンズ』のナタリー・エマニュエル。さらにオーブリー・プラザ、シャイア・ラブーフ、ローレンス・フィッシュバーン、ダスティン・ホフマンらが脇を固める。

 コッポラ監督は本作について、「私は皆さんのためになる娯楽作品を作りたいと思いました。今まで経験したことのないところへ連れて行くでしょう」と語っており、これまでにない全く新しい映画表現の限界を更新する意欲作となっている。

 「第77回カンヌ国際映画祭」(2024年)コンペティション部門でプレミア上映され話題となった本作では、老朽化したソ連の人工衛星がニューローマへ落下し都市を壊滅させる衝撃的なシーンも描かれる。コッポラ監督は「2001年の脚本にも人工衛星落下のシーンがあったが、9・11後にその破壊描写の重みを痛感した」と振り返る。

 また、解禁された本編映像では、衛星落下をめぐる市長キケロと部下の緊迫したやりとりや、落下の光が街に人影を映す演劇的演出など、コッポラならではのユーモアと映像美が光る。さらに“画面を三等分する”独自の構図など挑戦的な表現が散りばめられており、強烈な印象を残す。

 ビジュアルコンセプトには『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11年)、『ジュラシック・ワールド』(16年)を手がけたディーン・シェリフが参加。コッポラ監督の美意識を受け止めつつ、新たな映像世界を作り上げた。85歳のコッポラが私財を投じて挑んだ、かつてない映画体験をぜひ劇場で味わってほしい。