“風景”はどうすれば上手く撮れる? 「何を撮影すればいいのかわからない」を解決する撮影テクニックを専門家が解説

 SNSの広がりから、カメラを手にし、写真を楽しむ人が増えている昨今。いざ、デジタルカメラを購入してみたものの、何を撮影すればいいのかわからないと悩む人は多い。30年間「風景写真家」として活動する佐藤尚さんは、どう撮影すればいいかわからないときは「色・形・線」を探してみることが重要だと語る。風景を撮る際の考え方や、撮影のポイントについて佐藤尚さんに話を聞いた。

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■「とにかく最初の1枚を撮影」、被写体を探し出す気持ちが大事

 念願のカメラを片手に公園に向かっても、何を撮影すればよいのか。そもそも何を撮影するのか、被写体探しに悩む人は多い。まずは、「とにかく“最初の1枚”を撮りましょう」という佐藤さん。

「被写体は、なんでも大丈夫です。とにかく1枚目をすぐに撮らないと、次の写真が撮れなくなってしまうんです。『カメラを持って出かけたのに、なにを撮ろうか迷ったまま、1枚も撮らず帰ってきてしまった…』なんて経験をお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。1枚目をパッと撮ると、『写真を撮るぞ』という心のスイッチが入って、2枚目、3枚目を次々と撮れるようになります」

 最初の1枚といわれると、たとえば、代々木公園に行ったら噴水広場、旅行に行けば、お寺やお城などその土地のシンボルを撮影しなくてはと思いがちだが、そういったシンボルに行かずともいくらでも被写体は存在しているという。

「たとえば、公園の入口だったら、すぐそばに木々がたくさん生えています。その木々も被写体になるので、いくらでもいい写真が撮れると思います。逆に、噴水広場の噴水のようなシンボルが見えてしまうと、被写体を探し出す気持ちが生まれなくなってしまうんです」

■「色・形・線」を意識、全体ではなく1つのものにフォーカスすることがポイント

 では、実際に風景を撮影する際、何を意識すればいいのか。佐藤さんは「写真を撮るときに大切にしたいのが色・形・線というイメージです」と語る。

 たとえば、公園で木が生い茂っている場所を撮影するとき、たくさんの木が入るように全体を映し出す写真を撮る人が多いだろう。だが、いい写真を撮るためには1つのものにフォーカスすることが必要だという。

「大前提として、公園で撮影した場合にはたくさんの木がありますが、自分が決めた1本の木にフォーカスしてそれ以外のものは入れないようにすることがポイントです。そうすることで、『これは木の写真だよ』とハッキリ伝えることができます」

このようにフォーカスすることで、まっすぐ伸びている木々と、幹の上で広がっていく枝、「色・形・線」の3つのポイントのうち「線」をはっきり強調させることができる。

■余計なことは考えず「リズム」よく撮影、足を動かしながら観察してアングルを探す

 また、写真を撮る上では「リズム」も重要なポイント。何かの写真を撮ったとして、「これを撮ったからどうなるの?」「これをどうしたいの?」なんて考えはいらないと佐藤さん。

「歩いているなかで気づいたものがあれば、まずは撮ってみる。そこから『今度は別のアングルで撮ってみよう』と、いろいろ探っていくんです。そうすると素敵な被写体がどんどん浮かび上がってきます」

 気になる被写体を見つけたら、足を動かしながら観察してアングルを探す。ズームレンズで寄るのではなく、自分で動いて木に寄るのも重要。立ったままの目線ではなく、しゃがんで撮るなど、角度や目線が違うだけでも写真の出来栄えは変わってくるという。

「リズムよく写真を撮っていき、そのなかで、『色・形・線』をもとに考えて邪魔になりそうなものは写さないようにする。そうやって「何を撮りたいか」がハッキリさせて、意図を込めて写真を撮ると、すごくいい写真になります」

 どこかに出かけて風景撮影に悩んだときは、「色・形・線」「リズム」「自ら動いてアングル探し」の3つのポイントを意識して撮影を楽しんでみてはいかがだろうか。