ムスッとした顔で座っているダウン症の女の子・梨乃ちゃん(3歳)。見かねたお母さんが童謡を何曲か歌うも、「それじゃない!」と顔を横に振ります。そこで大好きな「パプリカ」を歌うと、梨乃ちゃんは大喜びで目を輝かせます。その可愛らしい姿を収めた動画が、380万回再生を超える反響を呼び、「喜びの顔が金メダル」「表情が豊かで可愛い」「天使を見つけた!」などとコメントが寄せられました。動画を撮った当時の状況や梨乃ちゃんと兄たちの関係性について、投稿者のお母さんに聞きました。
【動画カット】ドスのきいた睨みから一転…満面の笑みで喜ぶ3歳女児「天使を見つけた!」
◆へそを曲げた顔が面白くて…お気に入りの曲を歌ってほしいとねだる3歳女児が可愛いすぎる
――動画を撮影した当時の状況について教えてください。
「時期的なこともあって、最近すぐにへそを曲げるのですが、その顔が面白くて思わず撮りました。お気に入りの歌を歌ってほしがる子なので、このときも同じように歌ったらあんな映像が撮れました」
――「パプリカ」を好きになったきっかけは?
「昨年の『NHK紅白歌合戦』がきっかけです。梨乃はなぜか『紅白』が好きで、一昨年も録画を何百回と見返していて、その流れで2024年も一緒に観ていたら、出演者のみなさんが『パプリカ』を歌っていて、そこから一気にハマりました」
――娘さんは歌が好きなのでしょうか?
「歌はとても好きです。ダウン症の子どもは歌やダンスが好きな子が多い印象にあります。ほかにも梨乃はミドリーズの『ツバメ』も大好きですし、星野源さんも大好きです。2023年の『紅白』が特に好きで、『大人ブルー』や『め組のひと』、JO1の『smile』、ハマいくなどもお気に入りです」
――「3人の兄から溺愛されながら、少しずつ成長している」とのことですが、娘さんの成長を感じた瞬間を教えてください。
「先日、定期健診で病院に行ったのですが、エスカレーターにタイミングよく乗れたときやエレベーターの前で『気をつけ、ぴ!』と言われて、直立できたときなどにドヤ顔をしていて、成長を感じました。見た目は赤ちゃんのように幼いのですが、3歳半になるので、本人なりに『できるんだよ…』という気概が感じられるところがあり、そういったところにも成長を感じます」
◆「隠すようなことではない」ダウン症の娘について息子3人にフランクに話す理由
――3人のお兄ちゃんは、妹さんと普段どのように過ごしているのでしょうか?
「お兄ちゃんたちは、梨乃を本当に可愛がってくれています。長男はほぼ“第2のパパ”です。お出かけをすると抱っこ係に率先して立候補しますし、梨乃の成長を『親以上に喜んでいるのでは?』と思う瞬間も多くあります。次男は梨乃と顔がそっくりで、それがとてもうれしそうです。絵本をよく読んでくれたり、ジェスチャーで梨乃が何かを伝えようとしているときに、『○○なの?』としっかりコミュニケーションを取ってくれたりします」
――三男さんは?
「三男は甘えたい盛りなので、梨乃と一緒に遊びつつ、『どっちがママの膝に座るか』とスピード勝負をして、ライバル心を見せることもあります。でも、妹に譲るところは譲って、お兄ちゃんをしてくれています。梨乃のことになると、さまざまなことが『しょうがないな』となるので、母としては治外法権ではないかと感じていますが、本人たちはそれでよさそうです」
――娘さんはダウン症と胆道拡張症があります。娘さんの状況について、息子さんたちにはどのように伝えているのでしょうか?
「隠すようなことではないので、ただ知ったことや驚いたことをラフに話しているだけ…というのが正直なところです。『ダウン症って障害じゃないらしいよ』とか『半分のスピードで成長するんだって』といった情報共有レベルの雑談です。子どもたちが興味を持てば一緒に考えたり調べたりもしますが、それも特別な時間ではなく日常の延長という感じなので、子どもが意外と覚えていてびっくりすることもあります」
――息子さんたちの反応は?
「我が家は私も夫も“脳天気”というか、良くも悪くも深刻にものを考えられない性質なので、それが結果的にちょうどいい“軽さ”になっているのかもしれません。子どもたちも深く考えずに、『そういうもんなんだ』と受け入れてくれている気がします」
◆SNSを通して前を向くきっかけになってもらえたら…「同じ思いを抱えるお母さんたちに寄り添いたい」
――子育てをする中で、「大切にしていること」を教えてください。
「『愛情は言葉でちゃんと伝えること』と『ハグ』、次点で『話しかけられたときにはちゃんと聞くこと』を大事にしています。あとは、子どもたちがどこに『愛情』を感じるのかをそれぞれ把握して、満たしてあげるように気をつけています」
――「幸せを感じる瞬間」は?
「家族みんなが元気に目を覚ましてくれたこと、元気に1日を過ごせて、寝る前に「おやすみ、愛してるよ」と言ってくれること。子どもたちが楽しそうに遊んでいるときや、さも面白いでしょうと言わんばかりの顔で、まったく面白くないことをしてゲラゲラ笑っている姿を見ているときや、パパが子どもを見てうれしそうにしていたり、家族で公園に行って遊んだりするとき。そういったことのすべてに『幸せだなぁ』と感じます」
――SNSではどういったことを伝えていきたいですか?
「ダウン症の子どもを生む(または生む予定)お母さんたちの中には、すぐには受け入れられない私のような方も少なからずいると思います。産後つらかったとき、どんな励ましや慰めの言葉よりも、同じように痛みを過去に感じたことがある友だちが寄り添ってくれたことが救いになりました。混乱の中にいて、受け入れたいのに拒絶してしまう。拒絶する自分に絶望する。だけど、どうしても受け入れ難い。そんなお母さんたちに寄り添いつつ、ちょっとだけ前を向くきっかけになってもらえる、そんなコンテンツの1つになれたらなと思います」