舞台ハリポタ、手話通訳付き公演満員 キャスト全員で“手話あいさつ”も

 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』東京公演において、聴覚に障がいのある人も楽しめるよう、5月に2回、舞台手話通訳付き公演が実施された。両公演とも対象席は完売した。

【写真】客席エリアに設置した台の上で舞台手話通訳を行う様子

 舞台に向かって左側のエリアに舞台手話通訳対象席が設けられ、客席エリアの台の上で舞台手話通訳が実施された。通訳者はキャストと同じグリフィンドールのローブを着用。

緻密に構成された舞台手話通訳で、聴覚に障がいがあっても舞台の世界を堪能できる。カーテンコールでは、ハリー・ポッター役の吉沢悠が手話で通訳者を紹介。そして、最後は出演者全員で、手話で挨拶する場面も。

 舞台手話通訳付き公演の実施が決まったのは2024年7月。舞台手話通訳を務める田中結夏と江副悟史、手話監修の森田明と打ち合わせを重ね、台本を渡してから約3ヶ月の準備・稽古を経て、本番を迎えた。舞台手話通訳は、通常の手話通訳とは表現方法が異なり、登場人物の性格や雰囲気、演技を手話通訳に反映させることが求められる。ただせりふを手話で表すだけでなく、観客が感情移入できるような工夫が求められる。すべてのせりふを訳せない場合は、複数人のシーンにおいて、その中の1人のせりふの通訳に絞りながら、話している相手のせりふを受けているようなリアクション等も取り入れる「ミラー通訳」という手法も。

 また、役の名前についても、指文字で表現するだけではなく、役によってはサインネーム(手話で表現するあだ名)を決めることも。例えば、ハリー・ポッターは額の傷を表すような仕草がサインネームとなる。本作では、魔法や、架空の物の名前が多数登場するため、それらの表現など、検討が重ねられたという。