俳優・綾野剛が主演を務める映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男~』(6月27日公開)の主題歌がキタニタツヤの書き下ろし楽曲「なくしもの」に決定。「とても深い部分で音楽を感じられた」(綾野)、「締めくくりにふさわしい楽曲」(柴咲コウ)と出演者も絶賛している。
【動画】映画『でっちあげ』主題歌入り予告
2003年、小学校教諭・薮下誠一(綾野)は、保護者・氷室律子(柴咲)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えないいじめだった――20年前、日本で初めて教師による児童への虐めが認定された体罰事件。報道をきっかけに、担当教諭は「史上最悪の殺人教師」と呼ばれ、停職処分になる。児童側を擁護する550人の大弁護団が結成され、民事裁判へと発展。しかし、法廷は担当教諭の完全否認から幕を開けるのであった。
本作は、20年前に日本で初めて「教師による児童へのいじめ」が認定された体罰事件を題材にした、福田ますみによる衝撃のルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫)を三池崇史監督が映画化。主演の綾野のほか、柴咲、亀梨和也、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫らが出演する。
文学的な詞世界とジャンルの枠を超えたサウンドで、唯一無二の存在感を放つアーティスト・キタニタツヤ。23年に、アニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」オープニングテーマ「青のすみか」でブレイク。歌手としての活動に留まらず、SUPER EIGHTやLiSAなど数々のアーティストに楽曲を提供するなど、現在の音楽シーンを象徴する存在となった。
そんなキタニが、映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』のために書き下ろした新曲「なくしもの」は、“何を失くしたのかさえもわからなくて けれど大事にしてたことは憶えていて”という歌詞が表現するように、追い詰められた状況の中にいてもなお、かすかな希望を手繰り寄せようとする作品の世界に静かに寄り添っている。
楽曲について、キタニは「他者に奪われ壊され摩耗した人間が、全てを取り戻せないことを知っていてなお、再び他者を信じ手をとって立ち上がる。そういう強さは美しいなとこの作品を観て感じ、それを詞とメロディに込めました」と語っている。
綾野からは「キタニさんがこの作品にとても誠実に向き合ってくれて、(この楽曲は)”最後の最大の共演者”だなと思いました。歌詞がいい意味で散らばっていて、必死に手繰り寄せている感じがしました。それは、薮下や律子さん、あの世界を生きている人たち全員共通することなのかもしれないと。とても深い部分で音楽を感じられて、本当に感謝しています」と絶賛。
柴咲からも「人間のモヤモヤしている部分を彷彿とさせられました。映画と同化していて、締めくくりに相応しい楽曲だと思いました」とコメントが届いた。
主題歌情報とともに、最新予告映像も解禁。今回の映像では、教え子・氷室拓翔(三浦綺羅)に“体罰”をしたとして告発された教師・薮下誠一(綾野)が追い詰められていく姿が、より切実に、より濃密に描き出されている。拓翔のランドセルを乱暴に投げつける薮下、涙を溜めながら怪我をした拓翔に寄り添う律子(柴咲)、薮下に謝罪を強制する校長・段田重春(光石研)と教頭・都築敏明(大倉孝二)、薮下の元へ取材に訪れる鳴海三千彦(亀梨和也)…。
実名報道をきっかけにメディアの過激さが増す中、薮下は自身の無実の主張を続け、律子は薮下の体罰を認めてもらうべく裁判に乗り出す。さらに、両者の弁護士・大和紀夫(北村一輝)と湯上谷年雄(小林薫)も加わり、息つく間もなくストーリーが展開されていく。
そこに重なるのが、キタニタツヤの力強くも澄んだ歌声。自分を見失うほどの喪失感を抱えながらも、それでも生きる意味を探し続ける歌詞のメッセージが、薮下の”孤独”に肩を寄せる。そして、儚く切ないメロディを背景に、叫ばれるそれぞれの想い…。
――薮下「私は体罰をしていません」
――律子「傷ついている息子が、苦しみから解放されることを切に願っています」
――鳴海「私が記事を書かなければ、あの人たちを救うことはできない」
各々が信じる真実と揺るぎない想いが複雑に入り混じり、見る者の感情を揺さぶる。最後に、“いつか生きててよかったと思えるでしょうか”の歌詞と共に画面は暗転。同時に、「なぜ、それを信じますか?」のメッセージが表示される。映像冒頭にある「これは真実を疑う物語」とつながっていく。