2025年7月にシンガポールで開催される世界マスターズ水泳選手権に出場することを発表したアーティスティックスイミング(AS)の小谷実可子(58)。7月30日の初戦まで残り70日。
【写真複数】スタイル抜群の水着姿!34年ぶりにオーストラリアで演技を披露した小谷実可子
挑戦の軌跡を記す連載『生涯現役!58歳 アーティスティックスイミング小谷実可子の挑戦』の6回目となる今回は「34年振り!オーストラリアでの演技披露」について。小谷に『エキシビションとして招待された経緯』、『1人きりの遠征で得られたこと』などついて語ってもらった。
――3月29日にオーストラリアのパースで開催された「ASWA GALA HOUR」に招待されました。そのきっかけを教えてください。
小谷:“オーストラリアの大会でマスターズのカテゴリーの試合があるので出てみませんか?”というのが人づてで回ってきました。その案内を見たら、若手、トップ、マスターズ選手が同じ大会で競うということで、凄く興味を持ちました。
スケジュールを見たら、奇跡的にそこだけ3日間スケジュールが空いていたんです! このタイミングで、この試合があるとうことは“神様が行け!”と言っているんだと感じました。
そして出場の意向を示したら、今大会ではマスターズが新ルール(※事前に技を伝えてその通りに演技をする)が適用されることを聞いたので、私は旧ルールしか対応できないので、出場を見送るというメッセージを返したところ…向こうから「GALA」というエキシビションに招待したいから、そこで演技をしてくれないか? というメッセージが届きました。
招待してくれる…? でも、それは流石におかしいなと思っていたんですよね。でも先方から「ホテルや飛行機を手配したい」と言われ、「58歳のマスターズ選手だけど…本当に大丈夫?」と送りました。そうしたら、あなたがオリンピアンということも知っているから、ぜひ来てほしいと言われて行くことになったんです。
実際に行くと招待されたのは、イタリアのミニシーニ選手(昨年の世界選手権のチャンピオン・男子)、彼の教え子の現役選手、フィリピンのユース選手と、大会に国際色をだすために、様々な国の選手を招待していました。
――エキシビションですが、34年ぶりにオーストラリアで演技を披露しました。その時の感想を教えてください。
小谷:招待をされたからには、最高の演技を見せたいと思い、行く前も奮発してプールを全面借りきって猛練習するなど、できることすべてをやってオーストラリアに向かったんです。
その成果を水の中で出すことができ、見てくれた方たちから「アンビリバボー! 一体何歳なの?」と大きな声援をいただくことができました。
大会の関係者からは、「オーストラリアのすべてのアーティスティックスイマーたちに、アーティスティックスイミングは一生こうやって進化して楽しめるものなんだ、ということを証明してくれた。本当にありがとう」と言われたんです。私が表現したかったことがきちんと伝わって本当に良かった感じることができました。
そして、今回のオーストラリアでは1人での遠征だったので、ヘアメイクから本番まで全て1人でやり切れたというのが、凄く自信にもなったんですよね。
――1人きりでの遠征で何を感じて、どのような事が得られましたか?
小谷:ソリストとしての自分を思い出せたというのが、一番良かったです。やはり『孤独』なんですよ。チーム、ミックスデュエットとしての練習は楽しいです。でもソロがあるし、いろいろな仕事があるし…その大変さは誰も分ってくれないという孤独さがあります。
それを自分でどうしたものか…と思っていたのですが、ソロをオーストラリアで演技して、手ごたえを感じられたことで、本番に向けて自分の中で自信がつきました。
4曲中の1曲ではなくて、やっぱり100%、私はソリストだというのをもう一回思い起こさせてくれた遠征になりました。
――本番のシンガポール大会に向けても良い影響を及ぼしましたか?
小谷:今回オーストラリアは日本と四季が逆なので、夏だったんですね。やはり太陽がキラキラしていて、その中で演技ができるのって本当に良いな!と感じて、本番のシンガポール大会も夏で、こういう気候の中で演技ができるのかと想像できたので、すごく楽しみになってきました。
今の私の中でのソロの完成度は83%。4曲全ての演技で100%以上を目指すために、これからも練習に励んでいきます!
■小谷実可子(こたに・みかこ)
1966年8月30日生まれ、東京都出身。ソウルオリンピックでは夏季オリンピック初の女性旗手を務め、ソロ・デュエットで銅メダルを獲得。1992年に現役引退。東京2020招致アンバサダーを務めるなど国際的に活動。東京2020オリンピック・パラリンピックでは、スポーツディレクターに就任するなど幅広く活躍。日本オリンピック委員会 常務理事(JOC)、世界オリンピアンズ協会 副会長(WOA)、日本オリンピアンズ協会 会長(OAJ)など、15の役職をこなしながら、2025年7月に開催される世界マスターズ水泳選手権(シンガポール大会)で、4つの金メダル獲得を目指している。