精巧すぎ…指先サイズのバイオリンに驚きの声、こだわりは「本物とほぼ同じ材料と構造」
全長約5cm。極小ながら、材料も構造もほぼ本物と同じというミニチュアバイオリン。制作&写真/ヒナぞーさん
ドールハウスをはじめ、大人のコレクターズアイテムとしても人気のミニチュア。近年では、各地で教室も開かれ、コレクターだけでなく作り手も広がりをみせている。そこで今回、『ミニチュアアート展2018大阪』に出展した極小バイオリンが「素晴らしすぎて震えた」「言葉がでない」と大絶賛されたミニチュア作家、ヒナぞーさんにインタビューを実施。趣味はバイク、本業はピアノ修理職人というクリエイターが明かした精巧ミニチュアの秘訣とは?
【写真】手のひらサイズのストーブにツメより小さいスプーン…驚異の精巧ミニチュアずらり
■ミニチュア制作に特化した工作機械も自作
――イベントに出展されたミニチュアバイオリン、圧巻でした。全長5cmの小ささながら、本物さながらの風格を放っていましたが、ご自身としてはどんな部分にこだわりましたか?
【ヒナぞー】 木を使って本物と同じような構造で作った点ですね。特にスクロールと呼ばれるバイオリンの頭の螺旋彫刻の部分の制作にはかなり時間を費やしました。
――材料も構造もほぼ本物なんですね。バイオリンと一緒に展示されていたピアノやアンティークチェアも重厚感がありました。
【ヒナぞー】 木を使った作品が好きなので木の質感ができるだけ感じてもらえるように制作しています。あと、ミニチュア制作に特化した自作の工作機械なども使いながら制作しているので、他の作家さんとは違う加工なども取り入れているのでその辺りも見所かと思います。
――ミニチュア専用の自作機械!スケールが違います…。本業はピアノ修理職人とうかがっていますが、ミニチュア制作はいつ頃から?
【ヒナぞー】 子供の頃から工作が好きでプラモデルなど色々制作していましたが、2008年大阪での展示会でミニチュア作品の実物を見て衝撃を受けたのがきっかけです。それから1/12サイズのミニチュアの世界にハマりましたね。当時はあまり情報がなかったので試行錯誤しながらほぼ独学で学びました。
■実物を採寸、こだわりの塗装…細やかな仕事が本物らしさを創出
――作品は楽器類のほか、レトロ小物やフード系も多いですよね。題材のセレクトはどのように?
【ヒナぞー】 基本的には作りたいと思ったものを作るようにしています。題材が決まればできるだけ実物を見て、サイズや構造を理解してから制作に取り掛かるようにしています。ピアノなど楽器類は少しでも寸法がおかしいと違和感を感じてしまうので、実物から採寸してから制作しています。
――本職を活かされた楽器類のミニチュアはファンの間でも大反響ですが、レトロ小物のヴィンテージ加工も素晴らしいです!
【ヒナぞー】 私の場合木や金属、革などできるだけオリジナルに近い素材を使うようにしているので特に塗装には気を使っています。木材を塗装する場合などは塗膜が厚くなると素材の質感が損なわれるので、油性のステインで着色してから、エアブラシでクリアー系のラッカー塗料を薄く重ねて吹くようにしています。アンティークな質感を出す場合は塗装行程中にサンドペーパーで色を落としたり、他の色を足したりしています。
――多くの工程とこれまで培った技術によって“本物らしさ”は作られているんですね。今では、どんな作品も思いのまま制作できていますか?
【ヒナぞー】 いえいえ、技術的に完成させられなかったり、納得できる作品に仕上がらなかったり、制作に失敗することはよくあります。ボツになった作品やパーツなどは捨てずに集めているのでバケツ一杯分は溜まっています(笑)
■「今後は教室や販売作品の制作などにも力を入れたい」
――キャリア10年以上、ヒナぞーさんを魅了するミニチュアの魅力とは何でしょうか?
【ヒナぞー】 小さな作品に全ての力を注げるところと、苦労して完成させた時の達成感ですね!
――SNSでは趣味のバイクやお料理、本業のお仕事に…と多忙な毎日がうかがえます。現在の活動状況と今後の目標を教えてください。
【ヒナぞー】 今は、年に一度の展示会に新作を出展するために一年かけて準備しています。オーダーメイドなどの御依頼もありますが制作時間があまりないのでお受けしておりません。講師としては自宅のミニチュア制作工房で月に一度教室を開いています。本業が忙しいので今は無理ですが、今後は教室や販売作品の制作などにももう少し力を入れたいと思っています。