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“水=ピュアなもの”から“機能性”を重視? 各社から多様な付加価値を持つ商品が登場したことで「水の価値が再解釈される」

 長らく“ピュアでなければならない”イメージが定着していたミネラルウォーター。シリカ水や温泉水など、成分に強みを持つものを健康・美容目的で飲む人は増えているが、「市場全体で見ると小規模」というのが各社の見立てだった。ところが今年は一転して「たんぱく質が摂れる水」「食物繊維が摂れる水」など、“付加価値つきの水”が続々と登場。サントリー『特水』など、機能性素材を添加するため難しいとされる“無味・無臭・無色”を目指した商品も登場。金看板である『天然水』から、あえて差別化するように『特茶』ブランドから発売されたのにはどのような理由があったのか担当者に話を聞いた。

【写真】開発段階の「特水」パッケージ、透明感を強調、サイエンス寄りの幻デザインも

■なぜ今“水×機能性”なのか? ミネラルウォーターの価値観の変化

 『サントリー天然水』が発売された90年代当初は、「お金を出して水を買う」という概念自体が生活者にはなかった。しかし、その市場規模は年々増大。飲料水は生活必需品となっている。特に、“ミネラルウォーターネイティブ”である若年層は日常的に水を飲む習慣がついている人が多く、「水=買うもの」「水=美容・健康のために飲むもの」へと価値観そのものが変わってきている。

 1日2~3Lの水を飲むことで毒素を排出といった習慣もトレンドとなり、シリカ水や温泉水など、ミネラルウォーターの中でも優れた成分が含まれるものが選ばれる傾向にある。これは市場全体で見れば小さなものであったが、「その伸び率を無視できない状況にまでなってきている」と話すのは、サントリー食品インターナショナルで健康飲料を担当する野口裕貴課長。「カテゴリー全体のコモディティ化が進み、差別化の余地も縮小されています。各社から“機能性を持つ水”の新商品が登場していますが、そういった価値観の変化への対応策を同じタイミングで考えていたのかもしれません。美容・健康目的で水を飲む人が増えたことで、生活者自身が自然に水の価値を再解釈していく流れがありました」。

 サラヤから熱中症対策を目的とした「ノマナイトウォーター」、サイクルミーから「たんぱく質がとれる水」「食物繊維がとれる水」など、機能性を持つ水が各社から発売。コンビニでも展開され話題となった。電解水素水・酸性水・浄水が作れる家庭用整水器まで登場。すべて今年出てきた、水の価値を広げる新商品だ。生活のなかでも「水」を選ぶ場面が急拡大し、「水の付加価値」が商品を選ぶ基準にもなっている。

■「機能性を即座に理解してもらえるブランドでありたかった」“天然水ブランド”と袂を分かつ選択

 徐々に水への価値観が変わってきているとはいえ、同社は“天然水”というブランドでミネラルウォーターを展開している。天然の水、何も入っていないイメージがより一層強いものに他の成分を添加してしまうと、生活者から大きな拒否反応が及ぶ可能性もある。「ピュアな水に何かを入れる」ことで起こりうるハレーションを生みたくないと同社は考えていたという。

「天然水は当社が大切に育ててきたブランドです。『特水』を構想していく中で、天然水を使用することも構想段階では頭をよぎりました。でも、ピュアであるものに何かを添加することに抵抗感があるのもわかっていましたし、天然水に機能性成分を“なぜ混ぜるの?”という拒否反応が出るのも目に見えていました」

 一方、『特茶』は「機能性飲料」であることを誰にでも即座に理解してもらえるブランドである。

「純水を使用して『特茶』ブランドから出すことで、“特茶の水バージョンなんです”と位置付ける。水に機能性成分をなぜ混ぜるのかという前提や、機能性素材が入った水への拒否反応を和らげてくれるのではないかと考えました。同時に無味・無臭・無色を目指したことも大きいですが、『特水』発売前の調査で、最も拒否反応が少ないことがわかりました」

■機能性と水本来の味を両立する難しさ「“無味無臭”だから広く飲まれる原則を変えてはいけない」

 果汁や風味をつけてしまえば“機能性”は容易に実現することできるという。ただ、それでは運動中や就寝前といった水を飲みたいシーンの汎用性が失われるというデメリットもある。

「香りや味をつけることを落としどころとするという考えもよぎりはしました。ただ、水は“無味無臭”だから広く飲まれるし、そこに大きな価値がある。このカテゴリー原則を変えてはいけないと考え、それができる素材を探し続けました」

 そこから、機能性素材を50種類以上は試したという。しかし、味が出る、色が出るなどの理由により、そのほとんどがボツとなった。そんな中、“水として成立する”唯一の素材として、「HMPA(機能性成分)」を発見。飲用・色調・経時の試験を全てクリアしたのはこの素材だけだったそう。

「50個以上の素材をとにかく試し続け、1年ほどかけて見つけることができました。集めた素材の中で、“水”といえる中味を実現する素材は『HMPA』だけでした」

 商品パッケージに関しても、いろいろと試行錯誤を重ねた。化学式を思わせるサイエンス寄りにすると、どうしても“怪しい水”に見えてしまう。かといって、透明感を強調すると、特に機能を持たない“ただの水”に見えてスルーされる。熟慮の末、最終的に辿り着いたのは、「水色背景+特茶と同じフォント」の『特水』ロゴである。

「普通の水だと思われてもいけないですし、気持ち悪さや拒否感を抱くような水になってもいけないという、このバランスが単純に見えて実はすごく難しい部分でした。お客様は、水を選び時にあまり熟考はせず、ものの1~2秒でどれを買うか決められることが多いんですよね。その一瞬で選んでいただくために、『特茶』と同じフォントを使用して機能性と安心感が一発で分かるパッケージとなるよう調整していきました」

■“中高年層のためのお茶”…特茶ブランドに根付く課題を払しょくする狙いも

 10月21日の発売以降、想定の1.3倍のペースで売り上げ、想定以上の反響を呼んでいる。野口さん曰く、様々なコミュニケーションを見てきたなかで“水”がこれだけ盛り上がるのは稀な事象だという。また、若年層や女性の購入も目立っている。40~50代の男性が中心だった『特茶』とは、明らかに異なる層が反応を見せているのも驚きのポイントだ。

「特茶を発売した2013年は、生活習慣病やメタボといったキーワードが注目されていました。そのため、『特茶』自体は体型に気をつけたい40~50代男性に支えられてきたブランドでもあります。ただブランドとして成長や広がりをもたらすためには、“中高年男性向けの飲み物”という印象をなかなか崩せていないことが課題にもなっていました。今回若年層や女性層の購入が動いたことで、特茶ブランドとしても新たな広がりが生まれました」

 美容や健康といった水に対する新しい目的が生まれてきている今、『特水』は「ピュアだから良い」だけではない水の基準を提示。いつもの水と同じように飲める中味で、機能性を両立した。

 市場のなかでも、機能性を持つ水のカテゴリーとしてさらに伸長することで、コモディティ化しやすい水に「選ぶ理由」を生むこともできるだろう。

「当然、当社の主力はこれからも変わらず天然水なので、日常の水分補給として一番身近な存在として大切に伸ばしていく。私が担当している健康飲料の立場から言うと、その水を選ぶ理由として、エビデンスという新たな提案をしていきたい。水カテゴリー自体が差別化の難しい分野なので、その市場をもっともっと活性化させていきたいです。そして、健康目的で水を選ぶという価値もさらに広げていきたいですね」