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月額2,980円のままMRIやCTも受診可能、chocoZAP「mini人間ドッグ」が“予防医療”の新たな指針となるか?

 今年4月にスタートしたRIZAPが運営するコンビニジム・chocoZAPの「Mini人間ドック」。追加費用なしで最大年1回、MRIやCT、超音波検査等を提携医療機関で受診でき、5ヵ月で約1.2万人が利用している。フィットネスは健康と深い関係にありながら、これまで実現し得なかった医療連携。RIZAPグループ取締役の鈴木隆之さんと、提携医療機関である新宿三丁目メディカルクリニック院長の木村祐子さんに、垣根を超えた取り組みと高齢化社会における予防医療について聞いた。

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◆5ヵ月で約1.2万人が受診、そのうち有所見者は約4000人も

――「Mini人間ドック」は4月にスタートしました。現在の利用状況を教えてください。

【木村祐子さん】 9月6日までで約1.2万人が受診されています。年代では、40〜50代がボリュームゾーンですが、20代や60代以上も一定数います。予約はフルで埋まっており、MRIとCTを朝10時から夜10時までフル回転させています。受診された会員の方からお話を聞くと、会社の健康診断のオプションではMRIやCTの検査を1回受けるだけで3〜4万円の追加費用がかかるが、chocoZAPに入っていれば月額2980円の中で追加費用なしで受けられることに満足している方がほとんどです。関東だけでなく、地方から来る方もいます。追加費用なしで受けられるならと、東京に来たタイミングに合わせて予約を入れたそうです。

【鈴木隆之さん】 フィットネスと医療サービスの親和性の高さが、これだけ多くの利用につながっていると思います。これまでにも、エステや脱毛などを月額2980円のサービスの中に取り入れ、手軽さとコストパフォーマンスから初心者の関心を集め、利用者を増やしてきました。今回の医療機関との連携による「Mini人間ドック」も、MRIやCT検査を受ける機会がない人や、一般的なクリニックだと金額的に躊躇してしまう人も多い中、chocoZAPのサービスの一環にあることで身近になり、すでに1万人を超える方にご利用いただいています。皆さまにご満足いただけている手応えを得ています。

――検査結果によっては、提携医療機関への紹介までサービスに含まれています。

【木村祐子さん】 受診後、数週間でアプリ上またはメールでご本人に検査結果が届きます。約1.2万人の受診者のうち、有所見者は4000人ほど。決して低くない割合で何らかの所見がある方がいます。そのなかで悪性腫瘍が見つかった方など、速やかな治療が必要な方も数十人単位でいます。その方々には、ドクターとの問診の後に、連携医療機関や高度専門クリニックに紹介状と共に医療データを共有させていただき、受診者様の更なる精密検査と治療に繋げております。

◆徹底したローコスト運営、オペレーション効率を上げ医療崩壊を未然に防ぐ

――スタートからフル稼働状態です。人気ゆえに予約が取れないなど、運営における軋みや問題などは生じていますか?

【木村祐子さん】 サービス自体は特に問題なく順調に運営しています。

【鈴木隆之さん】 予約が取りにくくならないように、手を尽くし奮闘しています。基本的にchocoZAP会費の中で手軽にご利用いただく前提なので(年1回利用可能)、「着替えなし、ひとり10分受診」というスピード感でキャパシティを増やし、徹底したローコスト運営に加え、オペレーション効率を上げるための施策を行っています。

【木村祐子さん】 問診や受診案内などは事前にオンラインで済ませるため、当日はフラっと来てパッと受診が終わり帰っていく、通常の医療機関にはない空間です。ただ、時間的余裕のある年配の方にとってはタイパがすべてではありません。効率化はしているものの医療行為でもあるので、人間的なコミュニケーションを忘れずにオペレーションしています。

――検査項目や種類の拡大へのニーズもありそうです。

【木村祐子さん】 実際にそういう声は上がっています。今後、検査や検診を増やしていきたいと事務局では考えているところです。例えば、脳の経年劣化を数値化するサービス。脳の萎縮は、アルコールやタバコ、ストレス、運動不足などの要因があると、健常人よりも速くなることがわかっているので、MRIにそういう検査を追加することも考えられます。

【鈴木隆之さん】 具体的な時期は決まっていませんが、追加費用が発生するオプションメニューとしては、比較的短期間で増やせるように動いています。

――木村院長は、医療側の観点からの本サービスの社会的意義をどう考えますか?

【木村祐子さん】 一般的には、怪我や病気になりMRIやCT検査を受けるという方がほとんどです。しかし、その時点で見つかる病気は進行してしまっていることが多い。いままでの医療はそうでしたが、本来は症状がない時に能動的に受けていただくべき。そういうサービスが提供され、それが広く受け入れられる。これこそがこれからの日本が目指す予防医療です。それは、高齢化社会における国の膨大な医療費の抑制など、医療崩壊を未然に防ぐことにもつながります。chocoZAPは従来のスポーツジムの概念を覆しましたが、予防医療に介入するサービスをスタートできたことは、医療業界でも意義のあることです。

◆“フィットネス”と“医療”の連携を経て“予防医療”への挑戦が次の目標

――「Mini人間ドック」は、フィットネス業界のヘルスケア領域のサービスを医療業界とつなげました。両業界は親和性が高いように感じますが、これまでにこういった連携サービスは見られませんでした。

【木村祐子さん】 医療従事者の中には、連携や連動が大事だと考える人が少なからずいるものの、実際に事業として行うとなると、医療法人と営利法人が業務提携をする上で法律上のさまざまな規制があり、困難が伴います。そこをRIZAPさんにクリアしていただいたおかげで、今回のサービスが実現しています。

【鈴木隆之さん】 医療法人との連携はできないことはありませんが、それに加えて、こうした取り組みを社会的にインパクトのある形にする上で、難しい要件がありました。通常のクリニックの検査オペレーションとは異なる、効率的なローコストオペレーションを組み込むシステムを、デジタルとリアルにおいてゼロベースで作らないといけない。そのための柔軟性とチャレンジ精神のある新宿三丁目メディカルクリニックさんと一緒に取り組ませていただいたことで、会員の皆様にご満足いただける品質でサービス提供可能な最適なコストパフォーマンスのオペレーションを組み立てることができたと考えています。

――chocoZAPの日々の運動のデータと「Mini人間ドック」の受診データは、統合して活用されていくのでしょうか。

【鈴木隆之さん】 もちろんデータ連携は進めていきます。これまでにもRIZAPの運動データで大学と連携した共同研究をいくつか行ってきたので、それを活用した分析もできます。これまでにそういった企業や機関はなかったので、貴重な存在になっていると思います。

【木村祐子さん】 例えば、健康診断でコレステロールが高い、中性脂肪が多いと受診結果が出て、医師から注意を受けても、翌年変わっていなければ意味がない。ところが、chocoZAPのデータからそれぞれにあった運動や食生活改善の具体的なアドバイスがあれば、日々のトレーニングにフィードバックされ、健康の促進につながります。生活習慣の見直しが必要でありながら、それができない層もいます。そうした人たちをどのように動かしていけば良いのか、という時にフィットネスと医療受診の両データの連動から、改善法をフィードバックする。そこから、健康へのモチベーションを上げていくことが、「Mini人間ドック」の予防医療への次の挑戦です。

◆将来的にchocoZAPが“かかりつけ医”の代わりに…コンビニジムから地域医療に貢献するコンビニクリニックへ

――この先の医療機関との連携の拡大についてはどう考えていますか?

【鈴木隆之さん】 まずは新宿三丁目メディカルクリニックさんとの連携を成功事例にすること。そして現在の「Mini人間ドック」は東京・新宿だけですが、エリアと連携内容を拡大していきたいと考えています。

【木村祐子さん】 「Mini人間ドック」が全国に広がっていけば、地域医療における医師不足の課題を始め、社会貢献度の高いサービスになるでしょう。医師が足りない地域は多く、内科から精神科までひとりの医師が診ている病院は全国にたくさんあります。そこにchocoZAPが連携できることがあれば、素晴らしいことだと思います。

――フィットネスと医療を連携させることで、社会においてどのような役割を担うことができるのでしょうか。
【木村祐子さん】 ひとつは健康に対する意識が上がること。スポーツジム、エステ、カラオケ、病院などがすべてひとつのレイヤーにあることで同等の距離感になり、コンビニ病院といえる仕組みになっていることが大事です。もうひとつは、将来的にchocoZAPが“かかりつけ医”の代わりになることを期待しています。早朝・深夜でもすぐに予約を取って行ける場所になれば、生活に大きな安心感を与えることができます。そういうサービスを提供できるポテンシャルがあります。

【鈴木隆之さん】 まさにchocoZAPは気軽に行けることを追求してきました。コンビニジムがコンビニクリニックにもなるのはすごく良いと思います。そういうサービスを立体的に提供できる医療機関さんとの連携をさらに進めていきたいです。chocoZAPの基本理念として、体だけでなく心も含めた人々の健康と生活の充実を提供していく中、ヘルスケアの重要なテーマである医療との連携をしっかり進めることが重要であり、必要なこと。困難もありますが、進化させていきたいと考えています。

――医療機関との連携によるサービス拡大から、RIZAPグループが目指す先を教えてください。

【鈴木隆之さん】 chocoZAPでは、さまざまな事業分野にわたる広い意味でのプラットフォームを拡充しています。そのひとつが医療機関と連携した「Mini人間ドック」であり、chocoZAPメディカルです。利用者に満足してもらい継続していただく。それをこれからも繰り返しながら、皆様の健康増進と自己実現に貢献していければと考えています。

※検査は医療機関で行われ、chocoZAPでは一切の医療行為を行いません。

(文/武井保之)