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「逃げる=悪」なのか? ブラック企業や社畜描くWEB漫画家が提案、つらい仕事との向き合い方

 コロナ禍という未曽有の出来事の影響で、徐々に変化しつつある日本の働き方。とはいえ、苦しさを抱えながら仕事をし、追いつめられてしまっている人は大勢いる。そんな人々へ、“逃げる”ことの大事さを語るのが、Twitterフォロワー50万人超、ブログ月間2,000万PVのWEB漫画家・やしろあずき氏だ。ブラック企業や社畜ネタなどを発信してきた彼が提案する、“逃げるコマンド”とは? 若者世代の仕事への考え方、それによって見える未来も語った。

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■“逃げる=悪”なのか? 日本社会の風潮に疑問

――著書『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社)でやしろさんは、苦しさを抱えながら仕事を続けている人たちに、“逃げる”という選択肢を提示しています。この本を書こうと思ったきっかけは?

 「もともとブラック企業や社畜のネタをよく漫画にしていたので、そこに切り込んだ本を書きたいと思ったのが最初ですね。Twitterでは基本ふざけてるんですけど(笑)、たまにマジメなことも発信しているので、DMで相談されることもあるんですよ。『仕事で困ってるんですけど、やしろさんならどうしますか?』とか。一つ一つ答えるのは無理なので、自分の考えや意見をまとめておきたいという気持ちもありました。“逃げる”をテーマにしたのは、日本の社会のなかには“逃げる=悪”という雰囲気があって、それは良くないなと思っていたからです」

――“逃げずにがんばることが美徳”という。

 「そうです。実際に逃げるかどうかは別にして、“逃げるコマンド”を持っておくのは大事だと思うんですよね。逃げるという選択肢を持たないまま突っ走った末に、病んでしまったり、過労死することだってあり得る。つらいときや追いつめられときに、頭のなかに“逃げるコマンド”を表示するだけでも、一つのきっかけになるはずなので。僕自身、最初はゲーム会社に就職しましたが、やりたくないことから逃げ続けて、結果的に好きなことが仕事になったんです。母親も『部活とか、イヤだったらやめていい』という考えだったので、逃げることにネガティブな感情は持ってなかったんですが、社会に出たら全然そうじゃなくて。それを少しでも変えられたらいいなと思ってます」

――本のなかには「明日から使える定時退社する方法」など具体的な方法も書かれています。ただ、“逃げる”ことに躊躇してしまう人も多い気がしますが…。

 「いちばん良くないのは、やはりその人のなかで“逃げるコマンド”が存在しないということでしょうね。『ここで逃げたらどうなる?』と想像するだけでも可能性が広がるし、逃げ道が見つかるかもしれないと思うんです。そのうえで及び腰になってる人には、『あとはご自由に』としか言えないです(笑)。その人の環境だったり、どういう家族がいて、どういう上司がいるかもわからないので、一概にアドバイスはできない。最終的に判断するのは自分自身だし、僕は意見の押しつけはしないので。この本を読んでくれた人に対する責任は一切持ちたくないです(笑)」

――そこまでハッキリ言い切れるのも、やしろさんの強さですよね。

 「お金をいただいて人生相談しているのであれば別ですが、そうじゃないですからね。僕はただただ自分の考えを発信してるだけで、それを真に受けて『失敗した。どうしてくれるんだ』と言われても、『うるさい』としか思わない(笑)。それは正常な反応だと思うし、そもそも『こうすれば間違いない』『自分の考えが絶対に正義』とは言わないし、意見を押し付けるつもりもなくて。なので、絶対的なリーダーが存在するオンラインサロンも嫌いなんですよ(笑)。“逃げコマ”を読んでくれた方にも『こういう考え方もあるのか』と話半分くらいで捉えてもらって、それぞれの状況に応用してもらえたらいいなと思います」

■若い世代の意識に変化、「『働きたくない』と表に出す人が増えた」

――2020年は新型コロナウィルスの影響で、働き方も大きく変化しました。「自分の働き方はこのままでいいんだろうか?」と考えている人にも、“逃げコマ”は有益だと思います。

 「在宅勤務が当たり前になって、会社員とフリーランスで働く人の垣根が低くなってますよね。『家で自由に仕事できるって、いいだろ』という僕らフリーの優位性はなくなりましたが(笑)、それはともかくとして、リモートワークやデジタル化が進んだことは良いことだと思います。ここまで未曾有のことが起きないと動かない日本もどうかと思いますけど(笑)、余計な打ち合わせが減って、時間のゆとりができたことで、『これでやれるんだ』と気付いた人も多いんじゃないでしょうか。副業を始めたり、フリーになった知り合いもいるし、この傾向はさらに進んでいくと思います」

――やしろさんはSNSを通して若い世代とも交流があると思いますが、仕事に対する意識の変化も感じますか?

 「すごく感じますね。まず、以前に比べたら『働きたくない』と表に出す人が増えた(笑)。長時間労働やパワハラはダメだというのも当たり前になっているし、会社に尽くすような考え方はしないですよね。それがすべてではないし、マジメに働くことも大事なんですけど、今は“個”の時代になってきている。会社に所属していても、しっかり個を持っている人が増えているので、雇う側も認識を変える必要があると思います」

――フリーランスで働くことが特別ではなくなっていると。

 「はい。YouTuberやWEB漫画家もそうですけど、若い人たちが憧れている人は、ほとんどがフリーじゃないですか。そういう人たちが『好きなことを楽しんで、それを仕事にしています』と発信し続けているし、それを目の当たりにして育った人たちが大人になったとき、社会はさらに変わると思います。今、会社の上のほうにいるジジイたちも10~20年後にはいなくなってるだろうし(笑)、そのとき日本がどうなってるかが気になりますね。もしかしたら崩壊するかもしれないけど、多くの人が個の力を発揮して、もっともっと発展する可能性もあると思うので」

――きついことを我慢するのではなくて、“逃げるコマンド”を使って、楽しく能力を発揮できる場所を作ることが大切になりそうですね。最後にこの本を手に取ろうとしている読者の方がに一言もらえますか?

 「さっきも言ったように、僕は意見を押し付けるつもりはないので、まずは気軽に読んでほしいですね。今は大丈夫という人も、今後、何らかの問題に巻き込まれることがあるかもしれない。そのときに“逃げるコマンド”を脳のなかに立ち上げることで、その状況から抜け出すきっかけにしてもらえたらと思います」

(文:森朋之)