紙とハサミでリアル「ポケモン、ゲットだぜ!」 子どものハートつかむ“ポケモン切り紙”の魅力とは?

 のりやカッターを使わず、ハサミで一枚の紙を切り、折って立体の造形物を制作する技法を用い、『ポケットモンスター』のさまざまなキャラクターを制作してきた切り紙パパ(@PKirigami)さん。事前に設計図を描かず、フリーハンドですいすいとハサミを進め、生み出した見事な造形と“抜け殻”は、SNSで発表され人気を博している。「作り方を覚えれば、ハサミと紙だけでできるので、親子で楽しんでほしい」と話す同氏が、この手法でポケモンを作り始めたきっかけとは?

【写真】ギャラドスのヒゲまで見事に再現…“切り紙”ポケモンずかん

■園児の一言がきっかけ…作り方情報を遮断し独自の技法を考案

 切り紙パパさんがこの手法で作品制作を始めたのは、今から10年くらい前、当時、保育士として勤務していた保育園で、園児から「バッタを作ってほしい!」と言われたことがきっかけだった。

「虫の形は左右対称なので、コピー用紙を半分に折ってバッタの形にハサミで切ったんです。で、足と節の部分を折ってみたところ、本物のように立体的に見えることに気づいて、園児からも『すごい! 本物みたい!』と良い反応をもらいました」

 以来、先生の“妙技”に魅せられた子どもたちから、ウサギ、ネコ、ゾウ、恐竜など次々とリクエストがくるように。中には即興では難しいものもあり、「明日作るね!」とごまかして、「家に帰ってから試行錯誤していたこともあった」と笑う。

「紙を切って折るという技法については、ネットで調べれば動画や書籍が出てきますが、自分で考えることに楽しさを見いだしていたので、他の方の作り方は見ないようにしていました。その上で、リクエストされたものは、無理と言わずに絶対作る! という気持ちで作り続けるうちに、技術が高まっていった気がします」

 そんな切り紙パパさんがポケモンのキャラクターを作るようになったのは、作品をSNSで発表しようと決めてから。

「作品をもっと多くの人に見てほしいと思ってSNSへの投稿を決めたのですが、SNSに載せるなら何かテーマを絞ったほうがいいなと考えまして、小学生の頃にポケモンを全種類(当時151匹)見ないで描けるくらい夢中になっていたことと、ポケモンは多種多様な種類がいるので全部作れたら面白そうだなと思ったことがきっかけで作り始めました」

 最初はほとんど見てもらえない状態だったそうだが、ある日、ポケモンシリーズの制作を手掛ける増田順一氏がリツイートしてくれたことから少しずつ閲覧数が増加。今では2000人を超えるフォロワーが、同氏の作品を楽しみにしている。

「作品を見て、『すごい!』と言ってくださる方が多く、それが次作へのモチベーションにつながりました。もともと、子ども向けに始めた技法だったので、『うちの子が喜んでいます!』とか『作ってみたいです!』と言われることがすごくうれしいですね」

■大切なのは勢いと、ポケモンを愛する気持ち

 この“もともと、子ども向けに始めた技法”というのが、切り紙パパさんならではの特徴。切り紙、折り紙の世界には、何日間もかけて作り上げた超絶技巧の作品も存在するが、同氏は“保育園の中で子どものために目の前で作る”をこだわりとしてきただけに、「下書きナシ、フリーハンドでスピード勝負」で作ることを追求し、今もその手法を継続しているという。

「スピード勝負ということ以外にも理由があって、下書きを使うと線に勢いがなくなってしまうため、フリーハンドにこだわっています」

 その言葉通り、SNSには切り抜いた側のいわば“抜け殻”となった紙も紹介されているのだが、作品と並べてみると、まさに今、脱皮したかのような臨場感にあふれている。これは線に勢いがあるからこそ生まれる魅力だろう。では、その作り方はというと…。

「まず、作ろうと思うポケモンのイラストをじっくり見て、どう切ってどう折るかを頭の中でシミュレーションしていきます。その後、一度試しに切ってみてから、細部の修正をします。試し切りをしないこともあれば、何回試し切りしても納得できないこともあります(笑)」

 これまで数百もの作品を作り上げてきたという同氏。現在はSNSを見てくれている人からのリクエストにも応えるようになり、SNSを始めてから2カ月間で130種類を制作したそう。中でも一番苦労したのは、チコリータというキャラクター。

「小さくてシンプルなポケモンなのですが、『ひよこの饅頭』のような形を紙一枚で表現するのが難しく、納得するものになるまで時間がかかりました。未だにもっと違う作り方がないかなと考えています」

 また、一番印象深い作品は、ロコンというキツネのポケモンだ。

「SNSで最初に反響があった作品なので特に印象に残っています。自分がキツネが好きなことも大きいです(笑)」

 制作に要する時間は、簡単なものであれば数分、複雑なものだと10分以上。だがポケモン以外で、ゲームの『モンスターハンター』に出てくるモンスターなど、1時間くらい細部を織り込んで作った作品も存在するという。
 最近では、自宅で制作している姿を見ている3歳の娘さんが「自分もやりたい」と言い始め、子ども用のハサミを買ってあげたそう。「まだポケモンのことはわからないものの、『パパじょうず!』と言ってくれる」と顔をほころばす。子どもの心を動かすような作品にするためには何が大切なのだろう?

「作品を見せたとき、『カッコいい!』とか『かわいい!』とか感動してもらうことが大事だと思っているので、一番意識しているのは、そのポケモンが大好き! と思いながら切ることです。“紙で再現する”ということだけを意識して作ると、味気ない作品になってしまうことが多いですからね」

■ハサミと紙だけでできる“魔法”をやってみてほしい

「現在、800種類以上いるポケモンのうち、まだ3分の1も作っていないので、まだまだ」と語る切り紙パパさん。世にはお菓子や粘土、綿棒アート、3Dプリンター、羊毛フェルトなど、さまざまな手法でポケモンを表現している人たちが存在するが、彼らには“ライバル心”ではなく、“仲間意識”があるという。

「『ポケモン造形向上委員会』というSNSのコミュニティーに参加させていただいており、様々な表現手法の方と情報交換させていただいています。他の方々の素敵な作品を見ると、とても良い刺激になりますし、さまざまなお話を聞けて本当に面白いです」

 最後にポケモンを作ってみたい、やってみたい、と思う人たちにメッセージをもらった。

「ちょっと難しく思えるかもしれませんが、作り方を覚えれば、ハサミと紙だけでできますし、何より子どもに見せると魔法を見たように驚いてくれるのが魅力です(笑)。SNSやYouTubeの『切り紙パパの立体切り紙チャンネル』で作り方を公開していますし、子どもたちでもできるようにダウンロードできる型紙も公開しています。ふつうの折り紙とはまた違った楽しさ、作品の美しさがあると思うので、ぜひ、チャレンジしてみてください!」

文/河上いつ子