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SNSでの「炎上」「誹謗中傷」、裏側に潜む“心の問題”を精神科医が解き明かす

 コロナ禍の影響もあり、なにかとストレスを感じることが多い昨今。日本でも、徐々にメンタルヘルスへの意識が高まっているが、そんな中で精神科医・樺沢紫苑氏による著書『ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)が大きな注目を集めている。YouTube『樺チャンネル』でも多くの人の悩みに答える動画が好評で、登録者は25万人超。そんな樺沢氏に、SNSを通じた人間関係、炎上や誹謗中傷など、昨今とみに問題視されているSNSにまつわる悩みについて聞いた。

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■SNS疲れを放置していると、脳疲労やうつの原因に

――SNSが当たり前となった現在、しばらく前から「SNS疲れ」という言葉が登場したり、SNSを通じた誹謗中傷、炎上なども問題になっています。スマホを手放せなくなった現代人としては、SNSとどのように向き合っていけばよいのでしょうか?

 「スマホユーザーが増え、SNS疲れを感じている人は非常に多いでしょう。SNSに関する調査で『SNS疲れの経験がある』と答えたのは、全体の42.7%。もっとも高かったのは20代の女性で、なんと65.0%にも及んでいました。このSNS疲れはそのまま放置していると、脳疲労やうつの原因になるので看過できませんね。では、どのように向き合えばいいのか。心理学の『ヤマアラシのジレンマ』の概念に、そのヒントがあるように思います」

――『ヤマアラシのジレンマ』とは、どんなものなのでしょうか?

 「寒さの中、2匹のヤマアラシがいたとします。離れていると寒いので体を寄せ合いたい。しかし、近づきすぎるとお互いの針が相手に刺さって痛みを感じてしまう。2匹は近づいたり離れたりを繰り返しながら、お互いに傷つかず、ちょうど良い距離を見つけるのです。このたとえは、心理的に“適度な距離感”が重要だと教えてくれています。SNSはあくまでも道具です。ですから、リアルなコミュニケーションの補完ツールとして扱うのが良いでしょう。SNSの世界がメインになってしまうと、SNSに振り回され、疲れが生じます」

――最近、よく話題に上がる誹謗中傷や炎上についてはいかがですか?

 「良いことを書けば良いリアクションが、悪口を書くとネガティブなリアクションが返ってくる傾向があります。なぜなら、ネガティブな文章を読む人は、そもそも悪口が好きだから。ネガティブがネガティブを引き寄せるんです。つまり、SNSは物理学でいう“作用・反作用の法則”が適用されます。炎上系YouTuberがバッシングの対象になるのは、元をただせば当たり前の話ですね。自分でも、なにかネガティブな発信をしていないか、ネガティブな事柄の拡散を行っていないかなど、注意してみることをお勧めします」

――ネガティブな発信をしないためには、どうしたらいいのでしょう?

 「SNSは開かれた世界であり、多くの人の目にとまります。今、あなたが1000人の前で壇上に上がって講演をしているとして、そこで堂々と言えないことを書かないことですね。例えば、そこで有名人の悪口を言うとすると、1000人もいればその人のファンは絶対に1人はいます。すると当然、批判が来ます。つまり、リアルでは言えないことは書かない。SNSは顔が見えないのでネガティブなことを書きやすいでしょうが、こうした意識を持つことで、発信していいこと、悪いことの判断はつきやすくなります」

――誹謗中傷されてしまったら、どうしたら?

 「誹謗中傷する人は、『ネガティブな承認欲求』を抱えている人が多いので、反応すると喜んでしまいます。ですから、スルーするのが正解。また『好意の1対7対2の法則』というものがあります。あなたのことを嫌いな人が1人いたとしたら、中立は7人、あなたのことを好きな人は2人いるということです。中立はサイレントマジョリティであり、“プチ好意派”と考えてよいでしょう。つまり、1つの誹謗中傷があっても、プチ好意派を含めると9倍はあなたの味方がいるということです。そもそも、全員から好かれようと思っていることのほうが異常なんです。SNSを見てくれる10人のうち、あなたを支えてくれる2人を大切に、その人に向かって発信すればよいのではないでしょうか」

――承認欲求にも、ネガティブとポジティブがあるんですね。

 「あります。またSNSをやる際、承認を求めすぎないほうがよいと思えます。アドラー心理学のアルフレッド・アドラーは、『他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的に他者の人生を生きることになる』と説いています。他人の承認を求め、“いいね”ほしさに行動すると、いつの間にか他人に迎合する生き方になってしまう。また、ネット内だけの世界に浸りすぎていると、“いいね”を1つでも増やすことに躍起になり、現実を見失ってしまいます。きちんと現実世界に根ざすこと。先ほども言いましたが、SNSはリアルなコミュニケーションの補完ツールとして扱うのが正解だと私は考えます」

【Profile】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)精神科医、作家。1991年、札幌医科大学医学部卒。樺沢心理学研究所を設立。YouTube登録者25万人、メルマガ10万人、Facebook12万人、Twitter12万人など、インターネットメディアで圧倒的なフォロワー数を抱える。YouTube『精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル』では、2500本以上の動画をアップしている。『ストレスフリー超大全』ほか、『アウトプット大全』など著書多数。

(文:衣輪晋一)